アジア経済史が語る本来の「アジア」の姿
進んだ西洋、遅れたアジア?
世界の経済の中心は、19世紀以降、アメリカをはじめとする欧米諸国で、アジアや南米、アフリカは、「発展途上国」「新興国」などと呼ばれてきました。1950年代からの日本の高度経済成長や、1970年代以降顕著になった韓国、台湾、香港、シンガポールの経済発展、1970年代後半に市場開放をした中国の台頭によって、世界の経済分布は変わってきましたが、「進んだ欧米」「遅れたアジア」という見方は、今でも影響力を持っています。しかし、長い歴史を振り返ると、アジアが「遅れている」状態は、かなり例外的という見方もできるのです。
世界の富の4割がアジアで
国や地域の経済活動の規模を示す指標の1つにGDP(国内総生産)があります。統計に乏しい過去の時代のGDPの算出は、今日のように正確というわけにはいきません。それでも、さまざまな研究によって推計を重ねると、19世紀以前の世界では、GDPの実に4割がアジア地域、主に中国が占めていたと言われています。
ユーラシア大陸を横断する交易路「シルクロード」は、アジアで生産されていた絹織物にちなんで名付けられたもので、アジアの絹織物の交易は古代から盛んでした。また、15世紀半ばからの大航海時代には、ヨーロッパからアフリカ、アメリカ、アジアへの航路が確立されますが、この時の西洋人のアジアへの目線は、高品質の絹織物、陶磁器、お茶、香辛料などの交易にほかなりませんでした。西欧諸国は、アジアで生産される高級品を求めていたのです。
長いスパンで世界を見る
こうして見ると、アジアは長い期間、世界の生産・経済活動の中心であったということもできます。
直近数十年だけでなく、1000年、2000年と歴史をさかのぼり、長いスパンで世界を見ることは、現代をより深く理解する上で、とても大切です。また、経済活動の規模と動向に注目する「経済史」は、過去から現代だけでなく、現代から未来を展望できる学問分野でもあるのです。
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先生情報 / 大学情報
東京都立大学 経済経営学部 経済経営学科 准教授 竹内 祐介 先生
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