地中熱と地熱は簡単に使えて、地球にも優しい熱エネルギー!
地中の温度は変わらない
大気の温度はめまぐるしく変化しますが、地中の温度は年間を通してほぼ一定です。地熱の影響をあまり受けない地中10~100mの深さの温度は、その地域の平均気温のプラス1~2℃です。大気と比べると夏は温度が低く、冬は高くなります。したがって、地中と熱をやり取りすることができれば、冷暖房の効果は向上します。この発想から生まれたのが「地中熱ヒートポンプ」で、熱を媒介する代替フロンや不凍液などの「冷媒」によって、地中との間で熱を移動して採放熱させるものです。これによって冷暖房の消費電力が30~50%で済むようになります。また大気に排出していた熱を地中に分散できるので、地球温暖化防止にも寄与します。
地中熱ヒートポンプの普及に向けて
課題は掘削コストです。日本では100mの穴を掘る需要がないため、地中熱ヒートポンプが一般化している欧米と比べ数倍の費用が必要になります。近年、東京スカイツリーや県庁舎、自治体の施設など、全国1000以上の施設に地中熱ヒートポンプが導入されているのですが、初期コストの問題から家庭用としての導入には難しいところがあります。そこで考えられたのが冷媒の熱をダイレクトに地中とやり取りする方法です。全体的なシステムをコンパクトにすることができ、コストは抑えられます。
身近な熱を利用して発電
次に、地中熱とは違って、比較的温度の低い地熱を利用する、「バイナリー発電」があります。これは温泉などの熱源を利用し、沸点の低い媒体を蒸発させタービンを回す仕組みです。大規模な地熱発電との違いは、既にある源泉を使えば、新たな掘削の必要がありません。また工場などで廃棄している産業排熱を使い、発電することもできます。
この技術自体は1980~90年代に確立されていましたが、あまり注目されてきませんでした。転機となったのは東日本大震災後、各地の原子力発電所の運転が停止したことです。エネルギーの分散化が叫ばれるようになった結果、こうした小さな発電システムも注目されているのです。
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先生情報 / 大学情報
山梨大学 工学部 機械工学科 教授 武田 哲明 先生
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