「ビッグデータ」が、災害時の人々の命を守る!
耐震だけでなく、「ソフト防災対策」も必要
近年、日本では数年おきに大地震が起きています。また、南海トラフ地震も予測され、防災が注目されています。一口に防災と言っても、橋や建物など、構造物の耐震化を中心とした「ハード防災」と、防災訓練をしたり、避難システムを作ったりして、構造物以外の部分で災害を防ぐ「ソフト防災」とに分けられます。阪神・淡路大震災や東日本大震災のように、大きな災害であればあるほど、ハード、ソフトの両面での防災が不可欠です。
ビッグデータと防災を組み合わせる
情報化が進み、ソフト防災の分野で期待されているのが、ビッグデータを組み合わせた防災です。2000年前後に、通信機能が付いたカーナビ装着車とAIを使って、渋滞を避け、早く目的地に着けるルートを表示させる技術が登場しました。そして、これを災害時の避難に生かすシステムが開発されました。被災後の走行軌跡を調査することにより、どこの道が通れるか、通れないのかがわかります。通行実績があれば通れることがわかりますし、なければ、倒木や土砂崩れなどでこの道は使えないのではないかと推測できます。
瞬時に人の動きを把握できる
また、携帯電話の情報を使うことで人の動きも把握できます。携帯電話は、通話をしなくても定期的に基地局と通信を行っていますので、その情報を利用することで、いまどのエリアにどれぐらいの人がいるのかがわかるのです。観光地や各種イベント会場など、住人以外の人が多いエリアでも、瞬時に被害状況がわかります。2016年4月に起きた熊本地震では、指定避難所以外の場所に避難した人やマイカーで避難生活をした人が多く、避難者の把握に時間がかかりました。こうしたデータを活用すれば、より迅速な災害対応が可能になると期待されています。
これまで携帯電話のデータを使用するには数日必要でしたが、全国24時間365日、リアルタイムに利用可能な環境が整備されつつあります。いま起きた災害の被害軽減に、ビッグデータが活用できるようになるのです。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報
山梨大学 工学部 土木環境工学科 准教授 秦 康範 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
土木・環境工学先生への質問
- 先生の学問へのきっかけは?
- 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?