地下巨大トンネルをつくる!

地下巨大トンネルをつくる!

化石燃料備蓄の必要性

1973年の第1次石油危機をきっかけに、日本では石油を国家備蓄する決まりができました(石油ガス(プロパンガス)は1981年)。石油の備蓄には、地上にタンクを設置する方法、タンカーで海上に貯蔵する方法、地下の岩盤に巨大なトンネルを掘って備蓄する方法があります。石油ガスは地上のタンクのほか、地下水の水圧を利用して岩盤トンネルに備蓄されています。岩盤トンネル方式には、台風や落雷などの災害に強く、地上のタンクのように平野部の面積を広くとらないことなどのメリットがあります。
一方、天然ガスについては、現段階では供給が安定しており備蓄はほとんどありません。しかし戦争や災害などで世界情勢が急変する可能性は否定できず、岩盤トンネルに天然ガスを備蓄するための研究が行われています。

天然ガス貯蔵トンネルの問題点

天然ガスは液化すると体積が1/600になります。ただし、液化するにはマイナス162度まで冷やす必要があります。そこで問題となるのは、マイナス162度の液体をトンネルに入れると周辺の地下水が凍ってしまうことです。水が凍ると体積が9%増えるので岩石の亀裂が広がります。それが、天然ガスを取り出すときには常温に戻るので、トンネルが崩れるおそれがあります。対策として、ステンレスと断熱材で岩盤を補強する方法や、周辺の水を抜く方法が考えられます。そもそも、水を含んだ岩石が凍ると物性がどう変化するのかというデータが不足しているため、まずは基礎研究が行われています。

予期せぬ事態に備える

研究では、高さ30センチメートルのステンレスの円筒容器に岩石を入れ、高圧低温状態にして地下の岩盤を再現し、必要なデータを収集しようとしています。しかし既存の実験装置ではマイナス20度までしか冷却できないため、マイナス170度まで冷却できるように改良が進められています。
低温での岩盤トンネルの基礎データは、いざ天然ガスの備蓄基地が必要になったときに、スピーディな施工に役立つと期待されます。

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岩手大学 理工学部 システム創成工学科 社会基盤・環境コース 准教授 鴨志田 直人 先生

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