タンパク質の形を解明する方法とは?
結晶化すれば構造がわかる!
タンパク質はアミノ酸が鎖状に多数連結した高分子化合物で、生物の重要な構成成分です。塩や砂糖を水に溶かした後、冷却あるいは水分を飛ばすと塩や砂糖が結晶化しますが、タンパク質も同様のことが可能で、さらにX線を用いることでタンパク質内でのアミノ酸のつながりを解析できます。
例えば、細胞の中を移動して物資を運ぶ「ダイニン」というタンパク質複合体があります。結晶化による解析を行うことで、「脚」に当たる部分にどのようにしてエネルギーを送っているのか、また移動の際は「腕」に相当する部分を振ることも確認できました。
細菌からDNA複製の謎を解き明かす
結晶化による構造解析で、DNA複製の仕組みを解き明かすことも期待されています。タンパク質の中でも太古の昔から生物内に存在しているものがあり、細胞分裂の際にDNAの複製を促したり、エラーを修正するといった働きをしています。もちろんヒトにも存在していますが、それらのタンパク質はなぜか「古細菌」と共通する点が多いのです。したがって古細菌のタンパク質構造が解析できれば、ヒトがDNAを複製する仕組みもわかる可能性があります。古細菌の多くは気温50℃以上に達するような極限環境でも生存でき、そのため安定したタンパク質を持っていますから、その点も研究の追い風となっています。
構造解析で創薬サポートも
構造解析は創薬にも有効です。細胞内には脂質代謝に関わる「PPAR」というタンパク質があり、このタンパク質が機能不全に陥るとメタボリックシンドロームの原因になります。既にPPARに働きかける治療薬はありますが、副作用が強いのが欠点です。そのため新たな薬の開発が行われています。しかし薬剤がほかのタンパク質に結合しマイナスの効果を生んだり、PPARに結合しても機能しない可能性もあるので、タンパク質の結合状態を確認する必要があります。結晶化による構造解析はこうしたさまざまな場面で力を発揮しているのです。
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先生情報 / 大学情報
山梨大学 生命環境学部 生命工学科 教授 大山 拓次 先生
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