実は、表面の凹凸が役に立っているのです!
細胞を並べるだけでお金がかかる
新薬開発や細胞の機能を調べるには、最近では1個1個の細胞に薬剤を与えるテストを行います。何十、何百とテストするには細胞が並んでいる方がやりやすく、また細胞同士がやり取りする信号を調べるのにも便利です。細胞をピンセットでつまんで配置すればよいのですが、それでは時間がかかってしまいます。足場とよばれるプレートに凹凸を作ると、細胞は居心地のよい凹凸に移動してくれます。このような凹凸はさまざまなアプローチで製作されています。例えば、電子回路などの製作に使われる「リソグラフィー(原版に描かれた回路パターンを、光を用いて半導体に転写する技術)」もその1つですが、細胞や目的に合わせてオンデマンドで作るのは難しく、高価な装置なので多額の費用がかかってしまいます。
小さなビーズを並べれば凹凸になる
千分の一ミリメートル程度の小さなガラス球(ビーズ)を水にバラまき、その水を板材の上で乾燥させると、ガラス球は表面張力によってビッシリと集まって整列します。板材に親水性のある薬品を塗っておくことで、塗った部分にだけガラス球が隙間なく貼り付きます。ガラス球の表面には凹凸がありますから、これは細胞にとって居心地のよい場所になります。単純で高価な装置も必要ないので、これで安価に細胞の足場を作れます。このように作った足場が医療や新薬開発に役立てられると考えられています。
生活の中にある見えない凹凸
そもそも簡単に凹凸を作る技術自体、かなり有用だと言えます。例えばテレビやパソコンのディスプレイは電灯の映り込み(反射)を抑えるため、薄い層を何枚も重ねることで作られています。凹凸のある表面はそれ自体が光の反射を抑える構造をしているため、膜の枚数や手間を軽減できます。また凹凸は摩擦にも深く関係してきますから、見た目を変えることなく、手触りのいい材料や滑りにくい材料を作るのにも役立つのです。
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先生情報 / 大学情報
東京都立大学 システムデザイン学部 機械システム工学科 准教授 金子 新 先生
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