尿量の調節に関与する、細胞膜の水の通り道「アクアポリン」とは?
細胞には水だけを通すアクアポリンが存在する
人体にはおよそ60兆個の細胞が存在しています。細胞は、脂質でできた細胞膜に包まれており、細胞が生きていくためには、細胞膜を介して細胞の外と内とで物質のやりとりが必要です。細胞膜を透過できない物質は、チャネルやトランスポーターを介してやりとりしますが、赤血球の細胞膜に、水だけを選択的に通すチャネルが存在することが1992年に発見されました。この物質は、水の穴という意味を持つ「アクアポリン」と名づけられました。アクアポリンはタンパク質の一種で、内部に水分子1つが通れるほどの孔(あな)が開いています。
アクアポリンは尿量の調節にも一役
人間(哺乳類)の場合、アクアポリン0~アクアポリン12までの13種類のアクアポリンが発見されています。その中で、腎臓で活躍しているのがアクアポリン2です。腎臓は血液中を運ばれてきた老廃物をろ過し、大半の水分は血管内に戻し、残りを尿として排出しています。体の中がどれくらい乾燥しているかで、尿量を調節しているのです。アクアポリン2は脳の下垂体から分泌されている抗利尿ホルモン(バソプレシン)により、尿量の調節を行っています。バソプレシンがはたらくとアクアポリン2が細胞質から細胞の表面に移動して水の通り道を作るため、たくさんの水分が回収され、尿量が減ります。
アクアポリン2が細胞表面に移動するメカニズム
アクアポリン2がどのようなメカニズムで移動しているのかは、まだよくわかっていません。しかしその仕組みを解き明かすカギが「リン酸化」ではないかと考えられています。アクアポリン2がリン酸化することで別のタンパク質が集まってきて、アクアポリン2が移動している可能性が指摘されています。アクアポリン2の移動メカニズムを解明することで、細胞内でのタンパク質の動きについて、その謎に近づけるかもしれません。
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群馬大学 医学部 医学科 教授 松崎 利行 先生
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