古い建築様式を知り、新しい建築を生み出す「温故知新」の建築学
「建築学」は、総合的な学問
日本の大学で「建築学」は、工学部で学ぶのが一般的ですが、住宅に限らず、あらゆる建物には、頑丈さだけでなく快適性や美しさが求められます。そのため欧米では、芸術や文化、歴史などとあわせて建築理論を学びます。建築物に、強さと快適性と美しさが必要であるということは、古代ローマ時代にまとめられた建築理論書にも明記されており、古代地中海文明の影響を強く受けている西洋近代文明の建築様式には、この理論が脈々と受け継がれています。
古代ギリシア建築の発想
玄関、居間、壁など建物各部を規格化し、工場で組み立てた各パーツを組み合わせることで、工期の短縮を実現する「プレハブ工法」は、効率的な近代建築法の1つなのですが、その原型は、200年ほど前にフランスで確立されていました。ナポレオンが、武器を大量生産するために設立した技術系の学校で、数パターンの建築パーツを組み合わせて何種類もの建物を作る方法が開発されていたのです。
しかし、実はこの発想のルーツは、さらに古代ギリシア時代の神殿建築までさかのぼります。柱と梁(はり)の構成を、ドリス式、イオニア式など数種類に統一し、誰が建てても秩序ある組み合わせになる方法が考案されました。巨石で柱を立てる建築は、エジプトやメソポタミアでも古くから行われていましたが、古代世界において、建物各部の要素を統一し、建物全体を表現したのはギリシア人だけです。
建築の意匠は、まさに「温故知新」
ヨーロッパやイスラムの国々を訪れると、教会やモスクなど古い建物が現在も大切に使い続けられているのを目にします。ルネサンス期、ギリシアやローマの古典文化を復興する気運がヨーロッパ全域に広がった経験から、歴史的な建築様式を、次世代の人々が学び直せるように残しておくことの重要性を知っているからです。古い建築物について深く理解することで、新しい建築物を作り出す想像力も豊かになる、建築学は「温故知新」の学問とも言えるでしょう。
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先生情報 / 大学情報
熊本大学 工学部 土木建築学科 准教授 吉武 隆一 先生
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