聞こえない騒音 ~低周波による被害から音環境を考える~

聞こえない騒音 ~低周波による被害から音環境を考える~

2種類の騒音

私たちの身の回りにはさまざまな騒音があります。これらの騒音はほとんどの人が不快と感じるでしょう。しかし生活環境の中には人間の耳には聞こえない騒音(この場合超低周波音といいます)があり、それが人体に害を及ぼすことがあります。
過去にある地域で頭痛や不眠などの不調を訴える人が増え、その原因として1~2km先にある風力発電機の影響が指摘されました。風力発電機の羽が回転する時に、低周波という低い音が発生します。この低周波は人間が聞き取れる音の範囲外なので、耳で聞くことはできません。しかし、なんらかの影響があるのではないかと疑われたのです。

体に不調をきたす低周波

実験として、心地良い音楽を流した時と、明らかに嫌な音を流した時の脳波を計測します。その後に人間には聞こえない低周波を流すと、嫌な音を流した時の脳波と同じ反応を示しました。この結果により、低周波が脳に不快感を与えることが証明されたのです。同じような被害は夜間電力を使う給湯器でも発生しています。これまで大きな音による騒音被害と考えられてきたものの中には、聞こえる音が不快感を招くだけではなく、騒音に含まれる聞こえない低周波が体に影響を及ぼしている可能性もあります。

低周波を防ぐには

このような人の耳には聞こえないほどの低周波による被害を防ぐ方法として、近くで同じ周波数の正反対の低周波を鳴らせば、波を相殺することはできます。しかしこのような低周波音を出すスピーカーはまだ普及しておらず、現実的ではありません。考えられるもう一つの解決法は、耳に聞こえる騒音対策と同じように、何かの材料で覆って遮音する方法です。吸音材として使われているスポンジのような材料は高周波域を吸音しますが、低周波域はすり抜けてしまいます。また防音サッシのような窓の対策では、低周波の力が強いためにサッシを揺らして別の音を立ててしまいます。低周波での被害は、低周波が測定できるようになったからこそ露わになってきた問題であり、詳しい調査や解決方法はこれからの課題なのです。

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東北文化学園大学 工学部 建築環境学科 准教授 川村 広則 先生

東北文化学園大学 工学部 建築環境学科 准教授 川村 広則 先生

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建築環境学

先生が目指すSDGs

メッセージ

私は騒音の研究をしていますが、ピンポイントで騒音に興味を持つ人は少ないでしょう。まずは、いろいろな方向に広くアンテナを張って、たくさんのことに興味を持ちつつ、自分が面白いと思うものを見つけてください。そうすると、工学部の中の建築、建築の中の環境、環境の中の音響というように徐々に絞られていくと思います。
これが問題だとか、こんなことをやってみたいという方向を、ふんわりとでもいいのでイメージしていくとよいでしょう。そして音に興味を持ったなら、ぜひ一緒に騒音の研究をしていきましょう。

先生への質問

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東北文化学園大学は、仙台・国見の丘にキャンパスを持ち、医療・福祉・社会・経済・工学・情報の幅広い学びができる総合大学です。「実学教育」を教育理念に掲げ、専門職業人を育成する大学です。2021年4月から新しい学部を設置し、学際的な教育環境がさらに充実しました。また、「キャリアサポートセンター」の就職支援と相成って、例年高い就職率を誇り、卒業生は各業界で高い評価をいただいています。