木造建築の限界に挑む 強さの秘密を解き明かせ!

より高く、より安全な木造建築を
近年、環境への配慮から木造建築が注目を集めています。従来の木造建築といえば、神社仏閣や古民家のような低層の建物が一般的でしたが、最近では大規模な木造建築物も増えてきています。しかし、高層化が進むにつれて建物の安全性を確保することが重要な課題となってきました。特に、木材と木材をつなぎ合わせる接合部の強度をどのように保つかが大きな研究テーマとなっています。
木材ならではの難しさ
木材の接合部で起こる代表的な破壊現象に、割れたり裂けたりする「割裂」があります。鉄やコンクリートなどでも亀裂は生じますが、それらは工業製品で材質が均一のため、強度の予測が比較的容易です。これに対して木材は生物由来なので個体差が大きく、同じ条件で実験しても結果にばらつきが出てしまいます。そのため耐力の予測が難しく、厚く補強せざるを得ません。材料を細くしたり、減らしたりするために、予測精度を上げることが求められています。
この課題を解決するために、木材にピンを打って圧力や張力をかける破壊試験が行われています。1本のピンによる接合部の割裂は精度高く予測できるようになっており、現在は複数本での接合における予測精度の向上が目標とされています。
実験から実用化へ、新技術を生む
実験室での強度試験だけでなく、実践的な取り組みも行われています。その一つが「壁-1グランプリ」という大会です。この大会では、木造建築の耐震性を高める壁の性能を競います。強度だけでなく、使用する木材の量や施工時間なども評価の対象となり、より実用的な技術の開発につながっています。また、一般の人々でも取り組めるDIY木造建築の研究も進められています。ホームセンターで購入できる材料や工具のみを使って山奥にサウナ小屋を建設するなど、研究成果の実用化も着実に進んでいます。
これらの取り組みは、建築の未来を支える技術として注目されており、環境保全や持続可能な社会の実現にも貢献しています。
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先生情報 / 大学情報

東京都市大学建築都市デザイン学部 建築学科 准教授落合 陽 先生
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