空き家や空き地は新しい資源! その活用が本来のまちづくりに

空き家や空き地は新しい資源! その活用が本来のまちづくりに

まちづくりとは

「まちづくり」とは何でしょうか。まちとは、そこに住む人たちが交流して形成されるものです。日本各地で取り組みが行われていますが、本来まちづくりとは、地元の人たちが自分たちの空間で考えて、そこでしかできないことに取り組むことでしょう。
かつて炭鉱で栄えた、旧東ドイツのある街では、採掘場を自然の姿に戻そうという取り組みを行いました。その時、採掘場になる前に住んでいた住民らに、自分の人生を語ってもらうプロジェクトを始めたのです。実はその住民は、採掘前に立ち退きを強制された人たちでした。当時を語ることで土地にまつわる人の思いや歴史が共有されて、新しい住民や街の人の共感を呼びました。そして、人々はそこに住む意味を問い直すことができたのです。

理解し合い認め合う場所

これも旧東ドイツのある街の事例です。かつて工業で繁栄した街も、貧困による空き家や空き地の増加や、移民の過大な流入などが問題でした。いろいろな背景を持ついろいろな人種が住む街で、ある時、空き家を利用した「ごはんのかい」、日本でいう炊き出しイベントが開催されました。するとそこで少しずつ交流が生まれて、やがてホスト側に回って自分たちの国の料理をふるまう人も現れました。自分を認めてくれた場は、安心と、自身の尊厳を取り戻す場でもあったのです。時間も忍耐も必要ですが、人々の結びつきからにぎわいを育むことが、まちづくりの本質と言えます。

都市の隙間をつくる

この街は現在、いかに都市の「隙間」をつくるかという課題に取り組んでいます。空き家を問題ではなく「資源」として活用するもので、その背景には外部からの投資目的の家や土地の売買があります。それが進むことで土地の価格高騰を招くなど、まちづくりや人々の交流などへの逆風になりかねないからです。
今日本でも、同様の問題が観光地を中心に起きています。行政も海外に学び、空き家や空き地を「新しいものや可能性を育む力」という、一種の資源と考える政策が求められているのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

福山市立大学 都市経営学部 都市経営学科 講師 大谷 悠 先生

福山市立大学 都市経営学部 都市経営学科 講師 大谷 悠 先生

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まちづくり論、都市空間論

メッセージ

「まちづくり」と聞くと、ポジティブなイメージを持つ人も多いでしょう。しかし実際のまちづくりは、人のエゴのぶつかり合いです。自分たちの主張をぶつけ合うので、当然ケンカにもなります。しかし、そこで相手の主張の根っこにある思いや理由を探り、どこに利害の衝突や論争があるかを冷静に見極めるくらいまで、本音でやり合うことが重要です。そこにまちづくりの醍醐味(だいごみ)があります。そしてその先に、本来のまちづくりの、生きた学問が見えてきます。

福山市立大学に関心を持ったあなたは

福山市立大学は、福山市が設置する公立大学、4学期制による効果的な履修、4年間を通じた少人数参加型授業や、街と一体となったキャンパスを拠点に、福山市全体をフィールドとした体験型授業の充実が特色です。公立大学の特色を生かし、教育学部では地域の教育・保育施設との連携により実践力のある教育者・保育者を目指します。都市経営学部は全国初の学際的な学部で、環境を基盤として工学系、経済学系、社会学系の3つの領域を総合的に学び、持続的な都市社会の発展を担える人材を育成します。