牛の微生物で、農業のゴミの処理とエネルギー生産を同時に実現!
牛の第一胃中の微生物を利用
農業において意外に手間と費用がかかるのが、農作物を収穫した後に出る残渣(ざんさ)の処理です。例えば、トマトの収穫では毎日大量の葉が出ますし、ネギを出荷しようとすれば、むいた薄皮が山積みになります。こうした、いわゆる農業ゴミの処理に使えるのが「ルーメン液」です。「ルーメン」とは、胃袋を4つ持つ牛の第一胃のことで、この中には草や葉を分解してくれる微生物が棲息しています。このルーメン液に漬けておけば、茎や葉などは数時間で溶けてしまいます。また、紙もやはり植物由来ですから、オフィスから出る大量の紙ゴミも処理することができます。
ゴミ処理と同時にエネルギーを生産
ルーメン液で農業残渣を溶かしたものを発酵させるとメタンガスが出ます。原料は植物ですのでこのガスは再生可能エネルギーといえます。メタンは中国などの農村で食品残渣などから発生させて家庭の燃料として利用しています。研究レベルでは、50トンタンクでメタン発酵を行うと、17軒分の家庭使用量に相当するエネルギーを生産できます。溶かした液に含まれる窒素やリンは、肥料として利用できます。実用化に向けての課題は、ルーメン液内における微生物のコントロールです。これらの微生物は酸素に弱いため、酸素の影響を減らす必要があります。また、大量の液体を運ぶのは大変ですので、微生物の濃度と活性を高い状態のまま、いかに量を減らすかがポイントとなります。
食肉処理場にもメリットが
牛の第一胃の容量は約200リットルあります。毎年100万頭の牛が食用にされていますので、ルーメン液が不足することはまずありません。むしろ、ルーメン液の処理費用を削減できるメリットの方が大きいのです。有機物を多く含むルーメン液は、汚水として処理するとなると手強い部類に入り、食肉処理場では加工肉の冷凍と同じぐらいの電気代がかかっています。したがって、もしこのシステムが実用化でき、ルーメン液を再利用できれば、食肉処理場も大幅なコストダウンができるのです。
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先生情報 / 大学情報
新潟食料農業大学 食料産業学部 食料産業学科 アグリコース 教授(学長) 中井 裕 先生
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