3Dプリンタは、ものづくりの革命児となるか?
3Dプリンタを使うメリットとは
オバマ大統領が「3Dプリンタを使った新しいものづくりをする」と宣言した2013年以来、世界中のさまざまな分野で3Dプリンタによるものづくりが活性化しています。デジタルデータから直接ものづくりができるのが3Dプリンタの長所で、多品種少量生産のものに向いています。レーシングカーの部品や歯科のインプラント治療などでいち早く使われ始めています。特に生体材料はオーダーメイドに近いところがあるので、医療分野ではさらに利用が進むでしょう。
不可能を可能にする
3Dプリンタで、飛行機のジェットエンジンを作る研究も行われています。現在エンジンに使われているタービンディスクは、刀や板金と同じように金属を加熱し打ち伸ばす「鍛造」によって作られています。鍛造で作ると強度は上がりますが、組織を均一化させるのが難しく、中心部分の10%ほどしか使えません。3Dプリンタで作ればほぼ無駄がでないので材料の節約になります。また積層して作りますから、切削刃物が届かず作れなかった複雑な形状、例えば中が空冷空洞になったタービンブレード部品も作れます。従来の加工より軽量で高効率な部品が作れるのです。
理想は「割れない」金属
3Dプリンタで作った部品の特性の一部は、まだ既存の部品に及びません。既存の部品との違いは高温下における「靭性(粘り強さ)」です。そもそも金属は叩くと伸びる性質があり、だからこそ自動車のボディが凹んだときも、加熱して直すことができます。あまり伸びがなく靱性が小さい材料はこうしたことができず、またひび割れや破損の原因になります。例えば、陶器は金属より硬いですが、落とせば割れてしまいます。逆にゴムは軟らかいものの、落としても割れません。極端に言えば、ゴムのような伸びと陶器の硬さを兼ね備えた金属が理想的なのです。靭性を得るために、3Dプリンタでの加工プロセスを工夫しなければならないのか、3Dプリント後の処理で何とかできるかなどが「材料加工・組織制御工学」の研究テーマとなっています。
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先生情報 / 大学情報
東京都立大学 システムデザイン学部 機械システム工学科 教授 筧 幸次 先生
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