変換で不変な「不変式」で知の根源を探る!
正多面体はなぜ美しい?
同じ種類の正多角形を面に持ち、すべての頂点が同じ構造である正多面体(正四面体、正六面体、正八面体、正十二面体、正二十面体の5種類)は美しい形だと言われます。なぜ美しいと感じるかというと、「回転させてどの面を底面に置いても同じ形に見える」、つまり置き換えに対して不変だからです。数学的にはこれを「対称性」と呼びます。
このような性質を持つ「式」について調べるのが「不変式論」です。不変式の研究は、違う見かけを持つものたちに秘められた共通の本質を探っていく、人類の知の根源に迫るような意味合いがあります。
数学者ヒルベルトの第14問題
x3+y3という多項式はxとyを入れ換えても変わらない不変式です。x3+y3=(x+y)3-3(x+y)xyのように、この種の不変式は常にx+y、xyという2つの特別な不変式を用いて表すことができます。xとyの入れ換え以外にもさまざまな「変換」があります。与えられた変換に対し、x+y、xyのような役割を果たす「基本不変式系」を見つける研究は、不変式論の根本的なテーマの1つです。
数学者ヒルベルトは1900年の国際数学者会議で新世紀に向けて23の未解決問題を提示しました。その中の第14番目の問題は基本不変式系の有限性に関係する問題です。当時は不変式を具体的に構成しながら調べる方法が一般的でしたが、ヒルベルトは基本不変式系の有限性を一挙に示す画期的な方法を編み出しました。ヒルベルトの数学は今日の代数学にも大きな影響を与えています。
コンピュータでは解決しない問題
不変式をはじめとする多項式の研究では、実際に計算できるのでコンピュータが使われることもありますが、コンピュータではどうにもならない部分がほとんどです。計算によって何かを明らかにするということよりも、人間が考え、背後に潜む本質を探っていくことこそが重要なのです。そうした努力によって、次の時代につながる新たな数学が生み出されていきます。
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先生情報 / 大学情報
東京都立大学 理学部 数理科学科 教授 黒田 茂 先生
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