数学と哲学の間には、実は密接な関わりがある
論理に数学を持ち込んだライプニッツ
17世紀に登場したライプニッツは、自然に起きた出来事に記号を当てはめて数学的計算を行えばその現象を説明でき、重要な概念を生み出せると考えました。これが「普遍記号学」と呼ばれるもので、論理の中に数学的要素が隠れていることを示す、ひとつの先駆けとなりました。そして19世紀、今度はパースが言語を記号化し、ライプニッツの推論を展開します。パースは自らを「ライプニッツの再来」と称するように万学の天才でしたが、さまざまな物事に論理が飛躍する傾向がありました。そのため一般の人には理解し難く、断片的な着想は後世へのヒントとなるに過ぎませんでした。
数学記号の礎を築いたフレーゲ
パースよりやや遅れ、ライプニッツの推論を体系付けたのがフレーゲです。数学者だったフレーゲは研究を先に進めるためには、実数や関数を概念的に分析する必要があると考えました。そのために作り出した言語こそが、いわゆる「∀」「∈」といった数学記号の礎になったものです。フレーゲは自らの言語を「概念記法」と名付け、これを使えばさまざまな数学的論理を説明できると考えました。実はフレーゲの着想は大きなパラドックス(逆説)もはらんでいたのですが、ラッセルやウィトゲンシュタインといった後世の哲学者が完成度を高め、概念記法は数学の発展に寄与することになります。
数学者が哲学を変えた!?
フレーゲに代表されるように、19世紀以降は数学者が哲学の問題に大胆に踏み込んでくる傾向が見られました。そもそもライプニッツも微分積分学を成立させた数学者であり、日本でよく哲学の研究題材とされるフッサールも、数学をやっていくうちに独自の現象学を開拓した人物です。ある分野の専門家が探究できなかったことをほかの分野の専門家が解明することはよくありますが、特に数学と哲学の間ではこうしたケースが顕著でした。逆に数学から哲学に重要な概念が取り入れられてもいますし、両者の関係は非常に密だと言えるのです。
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