代数学でブレークスルーを! 「グレブナー基底」ができること

代数学をほかの分野に応用
数学には大きく分けて、純粋数学と応用数学という分野があります。純粋数学が数や図形の性質そのものを解き明かすのに対し、応用数学は科学技術に使われる分野です。
しかし近年では、純粋数学が現実の問題解決に応用されるケースが増えています。xやyなど文字を使った式を扱う「代数学」は純粋数学に分類されますが、これをほかの分野に応用し、ひいては科学技術の発展に結びつけようという研究が進んでいます。さまざまな問題を、文字を使った多変数多項式の連立方程式で表わして、それを解くことで問題解決しようというアプローチです。
複雑な方程式を解きやすくするツール
このときに使われる重要なツールが、特定の性質を持った多変数多項式の集合である「グレブナー基底」です。約60年前に発明されたもので、「ある多変数多項式をグレブナー基底に含まれるいくつかの多変数多項式で割り算すると、最終的に余りが必ず同じになる」という性質を持っています。これを使うと連立方程式から変数を消去することができて、解を計算しやすくなるのです。
例えば、このグレブナー基底を幾何学に応用することで、多面体の体積を求める解法が開発されています。多面体の頂点を座標で表わして多変数多項式をつくり、よいグレブナー基底を構成できれば、体積が同じであるようないくつかの四面体でうまく分割することができるため、四面体の個数を数えるだけで体積がわかります。
問題解決にブレークスルーを
グレブナー基底はすでに、多くの数式処理ソフトウエアに組み込まれています。また、最適化問題や統計学、デジタル通信の暗号への応用の研究も進んでいます。
こうした代数学の応用は、問題解決の「ブレークスルー」を起こす可能性が高いと考えられています。別の分野の問題を代数学的に表してみることで、背後にあるこれまで知られていなかった数学的な構造がわかるようになるからです。その構造に基づいた新しい解法が、行き詰っている問題を突破する可能性があると期待されているのです。
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関西学院大学理学部 数理科学科 教授大杉 英史 先生
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