データサイエンスを駆使して未来を予測し制御する

データサイエンスを駆使して未来を予測し制御する

数式モデルを使ったフィードバック制御

「もの」や「こと」の動きを望ましい方向へ変える仕組みのひとつに、「フィードバック制御」があります。例えば天ぷらを揚げる時、一般的には、温度計を見ながら火加減を強めたり弱めたりして油が適温になるように操作するでしょう。これもフィードバック制御にあたりますが、対象となる動きを数式モデルであらわし、モデルを使って動きを予測すればさらに効率よく制御できます。天ぷらの例では、火加減と温度変化の関係のデータをもとにして数式モデルを作り、数式モデルと実測温度にもとづく操作によって、より早く油を適温にすることができ、それを維持できます。

データをもとに数式を作る

数式モデルは、微分方程式や漸化(ぜんか)式などの数式であらわされます。モデルを作る対象の動きが物理的な現象で、運動方程式や化学方程式から挙動がわかるものであれば、それらの式に基づいて、モデルの数式のパラメータを決定します。一方、対象の動きが複雑で運動方程式などの物理法則にあてはまらない時は、もとになる数式が得られません。そのような場合には、データの値から数式をあてはめる「回帰」などの機械学習の基本的な手法を使ってモデルを作ります。

過去のデータから未来を予測

また、対象となる動きが時々刻々変化するなど数式モデルが作れない場合には、データサイエンスを活用します。データから直接予測制御をする「データ駆動」という新しい方法で、過去のデータをすべて蓄えておき、そこから現在の状況と似た状況をパターンマッチングで探し出して対象の動きを制御するのです。例えば、2本の白線のあいだにラジコンカーを走らせる実験では、走行時の白線の見え方をカメラで撮影し、そのデータをもとにラジコンカーの動きを予測制御して、白線からはみ出さないように走らせることができます。
現象によっては、数式モデルとデータ駆動の中間的な制御法が必要なものも考えられます。それも解決すべき今後の課題のひとつです。

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金沢大学 融合学域 スマート創成科学類 教授 山本 茂 先生

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システム制御工学

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メッセージ

いろいろなことに触れて視野を広く持ってほしいです。自分のやりたいことにつながらなさそうでも、幅の広い経験や知識はきっと後々役に立ちます。例えば私は高校生の頃、趣味でシンセサイザーに親しんでいました。その時に得た音を合成する方法についての知識は、一見関係のなさそうな今の研究と密接に関連しています。また、夢を持って、それを大事にしてほしいです。まだ夢を見つけていないなら、勉強に限らずさまざまなことを見聞きし、体験して、ぜひ自分のやりたいことを見つけてください。

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金沢大学は150年以上の歴史と伝統を誇る総合大学であり、日本海側にある基幹大学として我が国の高等教育と学術研究の発展に貢献してきました。本学が位置する金沢市は、日常生活にも伝統文化が息づき、兼六園などの自然環境に恵まれ、学生が思索し学ぶに相応しい学都です。江戸時代から天下の書府とも呼ばれ、伝統の中に革新を織り交ぜて発展してきた創造都市とも言えます。「創造なき伝統は空虚」との警句を胸に刻み、地域はもとより幅広く国内外から来た意欲あるみなさんが新生・金沢大学への扉を共に開くことを期待しています。