犯罪って何だろう? 「刑法」は何のためにあるんだろう?
白か黒か、はっきりさせるのが刑法
人間の犯した罪を罰し、更生させるために存在するのが「刑法」です。刑法は、曖昧な部分を排除し、グレーゾーンを徹底的になくし、白か黒かをはっきりさせていきます。現在、日本は刑罰が重罰化に向いている状況です。これが果たして犯罪抑止につながるかといえば、そう短絡的なものでもありません。刑に処され、刑期を終えて出所しても、身よりも、社会で生かせるスキルもないという現実があります。被害者や遺族の心情を考慮することは重要ですが、同時に取り返しのきく社会、再チャレンジのできる社会の構築も必要になるはずです。
罪を犯した息子をかくまった親は処罰される?
刑法はしっかりとした規定を持ちながらも、その時の心情や状況によっても刑罰の適用が変わってきます。例えば、罪を犯した息子を親がかくまったら、処罰されるのでしょうか? 答えはノーです。親には「刑が免除」される可能性があります。これは「親であれば、犯罪者であっても息子を守りたい気持ちがあるのは当然」という考えによるものです。一方で、他人のペットを逃がしたら「器物破損罪」になります。ペットの持つ効用を損なうことから物理的破損と同じとみなされるのです。このように一見、犯罪と思われることが、処罰されなかったり、ちょっとしたことでも重大な犯罪となってしまうことが世の中には潜んでいます。
刑法は時代やその土地の文化を反映している
犯罪は、時代とともに流行があり、変化していくものでもあります。現在危惧されているのは「オレオレ詐欺」などの「特殊詐欺」です。現金を引き出す役割をする「出し子」と呼ばれる人は確実に罪に問われますが、主犯格の人間はどうなるのでしょうか? 組織犯罪に対する法整備も急務となっています。そんな中、昔から変わらず事件が起き、被害が拡大しているのが「放火」です。日本では放火は重罰に処されますが、それは昔から木造建築が主流であることに起因しています。このように刑法は、時代背景やその土地の文化を色濃く反映するものなのです。
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先生情報 / 大学情報
岩手大学 人文社会科学部 地域政策課程 教授 内田 浩 先生
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