マイクロ波による青果物の加工が農家の未来を明るくする!
注目されている「加工食品」
現代の食生活において、食品の加工技術は欠かすことができません。近年、単身世帯や共働き世帯の増加などにより、加工食品の需要が拡大しています。乾燥食品などは災害時の保存食としても役立つ優れものです。現在、素材の栄養分を保ちながら商品化する新たな加工技術について研究が進められています。
マイクロ波を使った新しい加工技術
電子レンジはご飯を温めるときに使用したことがあると思いますが、加熱する際にはマイクロ波が使われています。マイクロ波による加熱は、対象物を短時間で加熱できることが特徴ですが、温度が高くなりすぎて適切な処理温度に保ちづらい問題点が指摘されてきました。そこで、減圧下でマイクロ波を処理することで沸点をコントロールし、処理温度を適切にコントロールしながらマイクロ波処理を行う「減圧マイクロ波処理」が注目されつつあります。
低温で処理を行うために、熱による栄養成分の損失を防ぐことができ、しかも低酸素環境下で処理を行うので色の変化も抑制できるメリットがあります。特にドライトマトやトマトピューレに対して「減圧マイクロ波処理」を適用することで、リコピンやビタミンCなどを保持しつつ鮮やかな赤い色を保つことに成功しています。現在はマイクロ波の照射時間や減圧の割合などを変えて、食味、色、栄養成分など多角的な評価を繰り返しながら、素材に適した条件が模索されています。
農業分野への大きな寄与も期待
収穫された青果物の2割程度は形状や色味の悪さなどで規格外となり、その相当量が市場に出まわらずに破棄処分になっているのが現状です。しかし、こういった技術を確立することで、市場に出ない青果物にも値が付き、農家の収入増につながります。またこの技術は、農業という第1次産業が食品加工から流通販売にも業務展開する、いわゆる「6次産業化」の可能性を秘めています。いかに商品を低価格・高品質化できるか、実用化に向けての研究が進められているのです。
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先生情報 / 大学情報
岩手大学 農学部 食料生産環境学科(令和7年度から農学部 地域環境科学科 革新農業コース所属) 准教授 折笠 貴寛 先生
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