『逆転裁判』に「異議あり!」
「異議あり」が少ない理由
ドラマやアニメ、ゲームで描かれる法廷では、検察官や弁護士による「異議あり!」が飛び交うシーンがあります。しかし、日本では、異議が唱えられるのは珍しいケースです。アメリカでは検察官と弁護士がリードして裁判が進行するのに対して、日本やヨーロッパでは歴史的に裁判官が積極的に進行に関わるやり方が採られてきました。このように裁判の歴史や発展の仕方が違うので、日本の現実の法廷では異議を唱える場面が少なくなっているのです。
最古の法典は「ハンムラビ法典」
世界最古の法典は「目には目を」というフレーズで有名な「ハンムラビ法典」ですが、このように刑事法の歴史をひもとくことで、現在にもつながるさまざまな法の歴史的背景が浮かび上がってきます。人間の歴史においては長きにわたって、裁くのは神の役割であるとされていました。犯罪の疑いがある人物を水に放り込み、浮かんだら有罪であるとする「神判」が用いられてきました。とても残酷で非合理的なやり方に思えますが、しかし、これは当時においては合理的な見地に基づくものであると受けとめられていました。科学が未発達で、過去に起きた出来事を立証するのが極めて困難なため、人は判断を神に委ねるしかなかったのです。
刑法の変革期と歴史的背景の関連性
その後、時代が中世に入ると「神判」から「自白」に重きが置かれ始めます。1500年前後は宗教改革の真っただ中で、ローマ教皇と世俗の対立から神への意識が変化し、その流れは刑事法にも影響を与えました。ここで「人が人を裁く」というスタイルが確立しました。
このように、法の変革には歴史的な改革や戦争が大きく関連しています。法というものは時代に応じて変化しながら受け継がれていくものです。現在、そして未来の法のあり方を考えるうえでは、歴史的変遷を踏まえた法の理解が重要な意味を持っているのです。
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先生情報 / 大学情報
岩手大学 人文社会科学部 地域政策課程 教授 藤本 幸二 先生
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