講義No.08216 法学

『逆転裁判』に「異議あり!」

『逆転裁判』に「異議あり!」

「異議あり」が少ない理由

ドラマやアニメ、ゲームで描かれる法廷では、検察官や弁護士による「異議あり!」が飛び交うシーンがあります。しかし、日本では、異議が唱えられるのは珍しいケースです。アメリカでは検察官と弁護士がリードして裁判が進行するのに対して、日本やヨーロッパでは歴史的に裁判官が積極的に進行に関わるやり方が採られてきました。このように裁判の歴史や発展の仕方が違うので、日本の現実の法廷では異議を唱える場面が少なくなっているのです。

最古の法典は「ハンムラビ法典」

世界最古の法典は「目には目を」というフレーズで有名な「ハンムラビ法典」ですが、このように刑事法の歴史をひもとくことで、現在にもつながるさまざまな法の歴史的背景が浮かび上がってきます。人間の歴史においては長きにわたって、裁くのは神の役割であるとされていました。犯罪の疑いがある人物を水に放り込み、浮かんだら有罪であるとする「神判」が用いられてきました。とても残酷で非合理的なやり方に思えますが、しかし、これは当時においては合理的な見地に基づくものであると受けとめられていました。科学が未発達で、過去に起きた出来事を立証するのが極めて困難なため、人は判断を神に委ねるしかなかったのです。

刑法の変革期と歴史的背景の関連性

その後、時代が中世に入ると「神判」から「自白」に重きが置かれ始めます。1500年前後は宗教改革の真っただ中で、ローマ教皇と世俗の対立から神への意識が変化し、その流れは刑事法にも影響を与えました。ここで「人が人を裁く」というスタイルが確立しました。
このように、法の変革には歴史的な改革や戦争が大きく関連しています。法というものは時代に応じて変化しながら受け継がれていくものです。現在、そして未来の法のあり方を考えるうえでは、歴史的変遷を踏まえた法の理解が重要な意味を持っているのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

岩手大学 人文社会科学部 地域政策課程 教授 藤本 幸二 先生

岩手大学 人文社会科学部 地域政策課程 教授 藤本 幸二 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

法学

メッセージ

法学は社会の中で起きているさまざまな事象を「法」という観点から切り取る学問です。
世の中のすべてのことが法律につながるので、日ごろからいろいろなことに関心を向けるようにしてみてください。また、特に人に物事を説明するときに、どうすればうまくいくかということを意識してほしいと思います。法学は大学に入って、一から学びをスタートすることになる学問です。大学で法学を一緒に学んでいきましょう。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

岩手大学に関心を持ったあなたは

岩手大学は、人文社会科学部、教育学部、理工学部、農学部の4学部からなり、文理バランスの取れた総合大学です。
宮澤賢治も学んだ歴史と伝統、そして市街地ながら緑あふれるキャンパスは利便性も高く、落ち着いた学びの環境を形成しています。
また、全学部がワンキャンパスにあるため他学部の学生との交流も盛んで、学生の研究や就職などにも大きな効果をもたらしています。
大学HPでは、学部紹介やニュース、「岩手大学公式X」等で大学の魅力をお伝えしています。興味を持った方は是非ご覧になってみてください。