まるで魔法! 「音」で物質を操る方法とは?

まるで魔法! 「音」で物質を操る方法とは?

音で物体を浮かせることができる?

「音響浮遊法」という、音による非接触型の物質制御技術があります。進行方向が逆の音波を特定の条件で重ね合わせると、定在波(定常波)という、波が進んでいないように見える状態になります。定在波には山と谷があり、谷間に物体を入れると、物体が音で捕捉されるため、あたかも空中にピタッと静止しているように見えるのです。音の方向を変えれば、捕捉した物体も自在に移動可能なだけではなく、固体だけでなく液体も制御できるため、小さな水滴を浮かせて空中で移動させる、混ぜ合わせる、蒸発させる、といった操作もできます。

世界中で開発が進んだ背景

人間の可聴域は20ヘルツから20キロヘルツ程度とされますが、音響浮遊法に使う音は、そのレンジの上限程度もしくはそれ以上(超音波)を用いますから、人間にはほぼ聞こえません。そのため、物体が浮く様子は魔法のように、あるいは無重力空間にあるかのように見えます。こうした技術が開発された背景には、宇宙開発(宇宙環境利用)がありましたが、多くの研究者にとって宇宙で実験することは極めてハードルが高いことでした。そこで、世界中の研究者は地上での活用にも知恵を絞ったのです。近年では、装置自体が小型化、安価になったことに加え、制御手法などの技術もオープンになったことにより、世界中で活発に研究開発が行われています。

地上だけではなく、宇宙での生活にも応用!?

「音響浮遊法」に対しては、流体分野はもちろん、物質科学、化学、生物学、など多様な分野から関心が寄せられています。とりわけ、再び宇宙空間(無重力環境)での応用が今後注目されることを期待しています。地上では容器を用いることで液体を特定の場所に固定することは造作もありませんが、無重力環境ではそうはいきません。そこで、音をマジックハンドのように使って流体や固体を引き寄せたり、止めたりする技術は、近い将来に人類が宇宙に進出し、宇宙でも快適な生活をするために必要な技術と言えます。

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工学院大学 工学部 機械工学科 准教授 長谷川 浩司 先生

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流体力学

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メッセージ

大学の持つ重要な価値は、個人所有が現実的ではない高価な設備や蔵書などの資産を共同利用できることです。理系であれば、この共同資産を活用しながら、専門的なカリキュラムを通じて技術を習得していくことに加え、文系科目を通じてリベラルアーツも自由に楽しみながら学べます。そうした多様な教養を持つことが、技術者や研究者の基礎になり、あなたを支えてくれるはずです。専門を選択するということは、世界の見え方を決めていく「レンズ」の選択でもあります。感性を養いながら、本学で学問の自由さや楽しさを味わってみませんか。

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工学院大学は、2017年に創立130周年を迎えた、伝統のある大学です。2019年4月から、専門性を高めた知識を得られるように、先進工学部の「応用物理学科」と「機械理工学科」では各学科を2専攻に分け、きめ細かな学修ができる体制に変わりました。
応用物理学科には応用物理の分野を究める「応用物理学専攻」と宇宙関連分野を学ぶ「宇宙理工学専攻」を、また機械理工学科には従来の機械の知識を学びながらグローバルな視点を養う「機械理工学専攻」とパイロットライセンスの取得をめざす「航空理工学専攻」を設置しました。