使う人々の目線で使い続けられる空間を造る
使う人にとっての「使いやすさ」とは
建築物を造るにあたっては、実際に利用する人々にとっての「使いやすさ」を想定した設計が大切です。特に公共空間では、機能面だけではなく、セキュリティなどの面からも考えて、適切な場所で適切な行動を促す動線を計画していきます。将来にわたって利用者に与え得るさまざまな要因を検討し、デザインと使い勝手のバランスを考えるのが建築計画です。
建築計画のユニバーサルデザイン
例えばトイレも、施設の種類や目的によって計画の方針は変わってきます。近年はスマートフォンの普及により、個人のトイレでの滞在時間が長くなりました。駅などの公共施設では、行列を作らないために設備の前提を見直す必要が出てきています。また、多様なジェンダーに配慮したスペースの設置も考えられています。ほかにも、センサ式の水洗トイレが普及してきましたが、多機能で便利になった半面、共通のインターフェースがないため、操作方法がわかりにくいという問題も出てきています。利便性が進むことで、従来のやり方を好む人にとっての使いやすさを取りこぼしてしまうこともあります。施設の目的に合わせて、訪れる誰にとっても使い勝手の良いものにしていくことが建築計画の「ユニバーサルデザイン」といえます。
社会の変化に合わせ計画も変化する
建築物の中で人々が行う行為は基本的に変わりません。しかし、ライフステージや疾病の種類などによって求められることは常に変化していきます。特別支援学校の建築計画の例として、ひとつのスペースにフラットな床と小上がりの畳ベッドが配置されたことがあります。畳スペースは安心して寝転がれる場所にもなり、車椅子の人にとっては立ち止まる境界になるだけでなく、寝転んでいる人とも目線を合わせやすくなります。それぞれの人に合わせ、学ぶ場所、働く場所、暮らしていく場所など、すでにある事例から学び、新しい空間にさまざまなトライアル(試み)を導入して機能と効果を検証していく必要があります。
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先生情報 / 大学情報
工学院大学 建築学部 建築学科 准教授 境野 健太郎 先生
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