アーバン・ヴォイド【都市のすき間】~都市のすき間に小さな仕掛け~
ビルを巨大スクリーンに ~パラサイトシネマ~
名古屋には白くて大きな四角いビルがたくさんあり、幅の広い道路が碁盤の目状に通っています。都市計画によって造られた超近代的な都市なのですが、空間的すき間が多く、無表情でにぎわいがありません。街が白いキャンバスのようです。愛知万博以前はライトアップもなく、夜は一転して黒い街でした。街を活性化するため、何もない黒い街のすき間(site)=名古屋で最も大きな白いキャンバスを持つビルに、サッカーワールドカップのライブ映像を映し出すという仕掛けをくっつけて(parasite)みました。すると、デートしていたカップルの男の子が、その映像に目をやり、急に彼女の手を離してそのキャンバスの前に行き応援し始めたのです。計画的な都市に非計画な要素を加えると、人の気配すらなかった空間にどんどん人が集まり、サッカー観戦で活気づき始めたのです。
100メートル道路にパラサイトする
名古屋の100m道路。歩行者用信号が約1分周期なので、青に変わって横断を始めた人は、車道横断に1分、中央で何もせず1分待ち、反対車線横断に1分と、100m渡るのに3分かかってしまいます。都市において1分でできることを考えてみましょう。ATMの操作、鏡の前で身だしなみチェック、携帯の充電、メールチェックなど、中央の高速道路下に仕掛けをすれば、今まで無機質な待ち時間を過ごすだけだった場所が、都市生活を有効活用できる空間に変わるのです。
日常のすき間にパラサイトする
空間的すき間を見つけるのが困難である東京のような過密都市の場合、満員電車でつり革を握ると血圧・脈拍・血糖値がわかる仕掛けをすれば、仕事の行き帰りや酒を飲んだ後の身体の状態をチェックでき、健康への意識を高めることが可能になります。
すき間へのパラサイトは、都市計画、建築デザインに限らず、プロダクトデザインにも提案を広げることができるのです。
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先生情報 / 大学情報
名古屋工業大学 工学部 社会工学科 建築・デザイン分野 教授 北川 啓介 先生
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