視線を利用してコンピュータを操作するには

視線を利用してコンピュータを操作するには

「視線」の計測、「視線」で入力する

人と機械との間で情報のやりとりをうまくするための技術、人間とコンピュータとの相互作用を「ヒューマンコンピュータインタラクション」と言います。
この分野では、「コンピュータを今より使いやすくする」、「コンピュータをおもしろくする」、また「操作がわかりやすく間違ったボタンを押すことがないような安全な装置を開発する」など、幅広い範囲が研究対象です。その中に、人間の意図を反映している「視線」を計測し、それを入力などに利用する方法があります。

個人のズレ角補正が精度を上げる鍵

視線計測は、まずカメラで人の顔を撮影して画像処理などをし、眼球の向きを計算します。ただし、ここで出てくる眼球の向きと実際に見ている向きは個人によって2~3度のズレが生じます。そのズレ角をさらに計算して補正することで精度良く視線を計測することができるのです。
この補正を「キャリブレーション」と言います。これまでは、事前にモニター上の何点かを見ることで使う人に合わせた補正を行っていました。そこからさらに技術が進み、もっと多くの人を対象にした日常的な使い方をめざす研究では、モニターをしばらく見ているだけで個人のズレを自動的に計算し補正することも可能になりはじめています。

広がる、視線計測技術の応用

これまで視線で機械を操作したり、コンピュータに入力したりするのは、心理学の実験や、障がいのある人が入力するための装置など、ある特定の目的で決まった使い方をすることがほとんどでした。
不特定多数を対象にした精度の高い視線計測技術により、例えば、購買者がスーパーの棚でどこを見ているかという市場調査や、博物館の展示ケースの前で来館者がどの展示物を見ているかを判断しそれに応じた解説を提供するというような応用も可能になります。視線計測は私たちの生活をより良いものにしていく可能性を秘めた技術なのです。

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神戸大学 海事科学部 グローバル輸送科学科 教授 長松 隆 先生

神戸大学 海事科学部 グローバル輸送科学科 教授 長松 隆 先生

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情報工学、電気工学、機械工学、心理学

メッセージ

コンピュータをもっと使いやすくするためには、どうしたらいいでしょうか。「視線の活用」がひとつの解ではないかと考えています。視線はその人の興味、関心、意図などを反映します。視線からそれらの情報を抽出することで、マウスなどを使わずにコンピュータを操作することが可能になります。このようにコンピュータと人間との間のやりとりを行う「ヒューマンコンピュータインタラクション」という分野の研究を行っています。この分野はまだまだ発展の余地があり、大変おもしろい分野です。

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