観光というツールで、訪れる人びとも、迎える地域の人びとも豊かに
変化する「観光」のスタイル
あなたは「観光」に、どんなイメージを持っていますか? 観光は一般に「楽しみのための旅行」と理解されていますが、「遊び」だけでなく、修学旅行のように「学び」を目的とした観光もあります。かつて観光は、団体で観光名所を見物し、ガイドブックで得た情報を自分の目で確かめる「確認の旅」が主流でした。しかし、近年は友人や家族といった小グループの旅行が増加し、旅の目的も多様化しています。いまやインターネットやSNSを介して、実際に現地に行かなくても、現地の情報を入手できるようになりました。その中で、旅行者を迎える地域社会では、遊びや学びが混在した観光を通して、新しい価値をつくり出すことが求められているのです。
お金では計れない価値を生み出す
旅行で見知らぬ地域を訪れたとき、どんなことが印象に残りましたか? 有名な観光名所だけでなく、地元の人びととのふれあいも記憶に残っていることでしょう。人の優しさや温かさに触れると、その地域の印象もよくなり、また行きたくなるものです。
一方、あなたを迎えた地域の人びとにとっては、あなたの感動が喜びや刺激となり、地元の魅力を再発見することで、地元への誇りや愛着を高めるきっかけになります。旅行者と地域住民との交流によって、両者にとって「精神的な満足感」という、お金では計れない価値が生まれます。
外部の力を生かし、地域社会も元気に
現在、農業・食・健康といった、さまざまなテーマを掲げた観光のスタイルが広がっています。この根底には、自然や文化といった地域の資源を保全しながら活用する、「サステイナブル・ツーリズム」という理念があります。旅行者が学びや楽しみの機会を得ると同時に、地域の環境や暮らしの維持にもつなげようという考え方です。
外部の力によって、地域の人びとが地域社会について考えたり、助け合ったり、他者とつながったりする力が育まれれば、地域そのものも元気になっていきます。観光は、人や地域を豊かにするツールとしての可能性も持っているのです。
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先生情報 / 大学情報
阪南大学 国際学部 国際観光学科 教授 森重 昌之 先生
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