幸せの心理学

幸せの心理学

世界でもっとも幸せな人々

幸せ(happiness)とは何かという問題は、「よく生きるとは何か」「何が理想の生き方なのか」といった哲学的問題を含みます。またその定義は文化的背景や個人の価値観によってさまざまに異なるため、これまで心理学ではあまり取り上げられませんでした。社会心理学者ホワイトは、過去に公表されたデータをもとに幸福感の世界地図を作成しました。そして国民の幸福感の高い国から順位をつけたところ、上位10カ国のうち半数以上が北欧周辺の国々でした。そしてこれらの順位と関連する指標を調べると、健康状態が良好で、経済的な豊かさや教育水準が高い国の人々ほど一般的には幸福感が高いことがわかりました。

結婚と幸福感

例えば結婚のような人生の節目となるような出来事が幸福感に与える影響は、最初の3カ月程度に限られているという報告があります。また交際中の恋人や既婚の夫婦への調査から、相手を理想化する夫婦の結婚への満足度は高く離婚率も低いことがわかりました。この結果は自分に関する情報を良い方向にゆがめるポジティブ幻想の働きによると考えられます。

物質的な豊かさ=心理的豊かさ?

ホワイトの結果について日本や韓国は例外にあたり、国内総生産 (GDP) は世界的に上位であるのに主観的幸福感は全体の中程度以下でした。その原因として、日本や韓国では成功のための制約が大きく、努力次第で成功を掴めるとはあまり考えられていないことや、自分の理想のライフスタイルを実現することが欧米ほど簡単でないことなどが指摘されています。また、物質的豊かさが必ずしも精神的豊かさを高めないという報告もあります。例えば近年の若者が非行に走る原因には過飽和ゆえの空虚感があるという報告や、実は文明の利器であるテレビはわれわれから想像力を奪っているという考えがあります。現代の日本は物質的豊かさと精神的豊かさがアンバランスな関係にあり、過剰な物質的豊かさの追求はかえって苦痛をもたらすのかもしれません。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

明治学院大学 心理学部 心理学科 教授 野村 信威 先生

明治学院大学 心理学部 心理学科 教授 野村 信威 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

心理学、発達心理学

メッセージ

明治学院大学心理学部は「こころを探り、人を支える」をスローガンに、心理学で学んだ知識をどのように社会に役立てられるかを考える機会を提供する場となることをめざします。大学の4年間というのは興味があることならば何にでも打ち込める、貴重な時間です。私自身は学生時代、大学外の実践場面、老人ホームで入居者の人の話を伺うことで心理学の研究に役立てるという活動を通して、高齢者の話を聞くことの心理学的な効果を考える「回想法」の研究に取り組むようになりました。あなたもぜひ4年の間にやりたいことを見つけてください。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

明治学院大学に関心を持ったあなたは

150年以上もの歴史を持つ明治学院大学。本学の起源は、1863年にアメリカ人宣教医師ヘボン博士が開設した英学塾から始まります。無償で診察を行いながら、英和・和英辞典を編纂し、ヘボン式ローマ字でも有名なヘボン博士。その信念「Do for Others」を教育理念とし、本学ではグローバル社会に対応できる学術知識と教養を培い、他者とともに道を切り開ける人材を育成しています。