「元留学生」が日本で活躍するには? キャリア構築の要素を探る

日本で働く元留学生
グローバリゼーションが進む中で、国境を越える人々の移動は急速に増加しており、その影響は社会に多大な変化をもたらしています。学生時代に来日して、そのまま日本で就職する人も珍しくありません。こうした元留学生たちは、日本語や日本での生活に慣れて問題なく働いていると思われがちです。しかし実際に働き始めると、さまざまな葛藤や困難を抱くことがわかっています。
文化的アイデンティティとキャリアの関係
日本で働いている、中国人の元留学生を対象にした調査結果を見てみましょう。この調査では、キャリア満足度と文化的アイデンティティについて問うたものです。するとキャリアに満足している人を含めて、多くの元留学生は仕事面において日本人のように考えたり行動したりすることができている一方で、「自分は中国人である」という意識を強く持ちながら働いていることが明らかになりました。特に言語スキルや中国文化への理解を仕事に生かせたとき、元留学生の多くは「中国人でよかった」と実感しています。
一方で、キャリア満足度が低い人は「日本にいるのだから日本人のようになりなさい」と周囲から同化を強いられているケースが多いとわかりました。その結果「中国人としての特性を発揮できる場で働きたい」と感じて、転職や日本以外の国で働くことを視野に入れるようになるのです。
満足したキャリアを築くためには?
キャリア満足度を向上させるために必要なのが、周囲からの支援です。外国人に対して理解のある上司からアドバイスが受けられる、職場での愚痴や悩みを話せる友人がいるなど、職場内外の人間関係が充実している人は、キャリアに満足しやすい傾向が見られました。言語能力だけでなく、周囲とのつながりを築くことも、元留学生が日本で活躍するための要素なのです。
このようにキャリア満足度が高い人と低い人の特徴を調べると、個人や社会の課題が見えてきます。元留学生に限らず、「働きたいと願う誰もがキャリアを築ける社会」をめざして研究が続けられています。
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