つかみどころのない心を数値化する「心理統計学」
心を数値に換えて科学的に分析する「心理統計学」
TOEFL(R)のような言語テストは年に複数回行われていますが、難易度が低い回、つまり、高スコアを出しやすい日程というのはあるのでしょうか? 答えは当然ですが「ありません」。受験した問題の内容が異なっても、受験者の語学力が同じであればスコアも同じになるという、にわかには信じられないような測定が実現しています。この魔法のような測定は、「項目反応理論(テスト理論)」という心理統計手法を使って可能となっています。
テストでは、学力(心の現象)というあいまいなものを測定するからこそ、その方法には公平性や客観性、厳密性が求められます。つかみどころのない心を研究するからこそ、それを妥当に数値に置き換え、科学的にアプローチするのが「心理統計学」なのです。
データから法則を推測するためには?
例えば、「高校生の読解力が低下している」と主張する場合には、20~30人の生徒のテスト結果ではなく、もっと大規模な集団に調査・分析した結果をもとにする必要があります。多くの人に当てはまる傾向であるからこそ、「読解力が低下している」という主張ができるのです。統計学は、こうしたデータの中に潜む何らかの法則性を発見するのに非常に役に立ちます。また、統計学を正しく利用することで20~30人の小規模なデータからでも「心に関する一般的な法則」を推測することができるのです。
企業活動のあらゆる場面で応用される実学
スーパーやコンビニなどでは、いつ・どこで・誰が・何を買ったのか、という消費者の購買行動のデータを分析することで、売り場の陳列などの販売促進を行っています。ほかにも、消費者のアンケート調査から、企業の「ブランド力」を数値化し格付けを行うという取り組みも行われていますが、こうした、消費者行動や企業のブランド力の分析にも、心理統計学の手法が広く応用されています。今、幅広く社会に活用できる実学としての心理統計学に期待が高まっています。
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先生情報 / 大学情報
明治学院大学 心理学部 心理学科 准教授 川端 一光 先生
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心理統計学先生への質問
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