攻撃行動の裏には、環境の影響と「認知のゆがみ」がある
攻撃する人も空気を読む
攻撃行動の原因は、個人の性格や家庭環境に問題があると考えられてきました。しかし、どんな組織にも攻撃行動が発生する可能性があり、所属する集団の環境から生み出されることも多いのです。基本的に攻撃行動は欲求不満やストレスの発散を目的としていますが、ストレスが発散できたとしても、自らの立場が悪くなることは避けたいというのが人間の心理です。つまり、通常は周囲から嫌われないように「空気を読む」行動をしており、攻撃行動が許容されると感じれば実行しますが、攻撃行動に否定的な雰囲気を感じとると自制するものです。
集団規範はどのように生まれるのか
なんとなく守らなければいけないと感じる場の雰囲気(ルール)、いわゆる集団内の暗黙の了解を「集団規範」と呼びます。日本などアジア系の学校では「学級」の概念が強く、教室で固定されたメンバーで過ごす時間が長いことから、強い集団規範が作られる傾向があります。集団規範に強い影響力を持つのはリーダーで、学校であれば担任教師です。したがって担任教師が生徒に対し親近感のある態度で接し、攻撃行動に否定的な姿勢を打ち出すことで、攻撃行動は許されないという集団規範を作ることができます。逆に理不尽な言動や過剰な罰を与えることが多いとみなされると、攻撃行動に対し肯定的な集団規範が生まれます。
人はなぜ自らを正当化するのか
また人間は悪いことをすると良心の呵責(かしゃく)や罪悪感、恥の意識を感じます。したがってその感情を回避するため、相手が悪いのだから攻撃されて当然といった「認知のゆがみ」を起こすのです。認知のゆがみは犯罪や非行はもちろん、学校内での攻撃行動やインターネット上での「炎上」など、すべての行動に対して働く可能性があります。これを正すには、どんな理由があろうとも攻撃行動を取ってはならない、問題は社会的に認められる形で解決する必要があると教育することです。ゆがみを正すことができれば、状況を改善できる可能性があるのです。
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甲南大学 文学部 人間科学科 教授 大西 彩子 先生
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