今、歴史学ほど実生活に役立つ学問はナイ!
偉人伝だらけの歴史教育にみんな疑問?
「ナクヨうぐいす平安京」……。テスト前にこのような暗記中心の勉強に追われ、日本史や世界史が苦手になってしまった人も少なくないことでしょう。また、歴史学はただ過去の出来事をなぞるだけで、現代人の生活に役立つ学問ではないと否定的にとらえている人もいるのではないでしょうか。
高校までは、偉大な政治家や芸術家、思想家などを取り上げる歴史教育が中心です。なぜなら、現代社会のあり方を把握する上で歴史上の大きなトピックをおさえることは大変重要だからです。それに、おおまかな基礎知識があれば歴史ドラマや小説がもっと楽しくなるでしょう。でも、自分の暮らしとはかけ離れた内容ばかりで頭に入らず、実生活と結びつかないと思うのも無理はありません。
今の研究トレンドは「庶民のライフスタイル」
ところが、1980年代半ばから歴史研究のトレンドが変わりつつあり、庶民のライフスタイルが価値あるものとして脚光を浴び始めました。偉大なる人の業績と同様に、庶民が文明や文化を作ってきたのだという認識が広がってきたのです。
例えば、裁判資料から民間の争いごとを検証し、当時の暮らしをあぶりだす研究者たちがいます。子育て、家庭生活、親子関係など、従来は歴史学の対象ではなかったような題材が、立派な研究対象になっているのです。昔の人の質素なライフスタイルが今話題のエコ生活のお手本になったり、先人のマナーがこじれた人間関係を解決する糸口になるかもしれません。実は今、歴史学は十分に生活に役立つ学問なのです。
宝物を整理する作業、それが歴史学
子どもの頃から捨てられずにいる大切なものと同じように、長い年月を経た中で残った史料などは、人類にとって財産であり宝物です。その宝物を整理する作業というのが、歴史学です。研究対象が広がった今、宝物の整理法を自分なりにアレンジする楽しみも広がっていると言えます。大学で歴史を専攻する人は、その楽しさを存分に味わってください。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。