細胞の「ものづくり」の秘密を解き明かせ!
短命なRNAを調べるために
RNAは生物の細胞内で重要な役割を果たし、環境刺激に応じて迅速に変動します。このため、遠隔地のRNAを分解・変動させずに実験室へ運ぶことは困難です。また、従来の装置は大きく重いため、現地に持ち込むことが難しいです。そこで、軽量で持ち運び可能なスーツケース型の実験装置が開発されました。具体的には、冷却が必要だった細胞の破壊・分離を常温で行うことで小型化を実現していて、ゴビ砂漠やアラスカの永久凍土などの極限環境で生息する微生物のRNA解析が現地で進められています。将来的には、フィールドロボティクスと連携し、人が立ち入れない場所でも不安定な生命分子の解析を可能にすることが目指されています。
サメ肌を作る?
生物は環境に適した多様な形や機能を持っています。この立体構造の作り方を模倣できれば、さまざまな機能を持つ形を生み出せます。そのためには、細胞が遺伝情報を基に立体構造を形成する「Biogenesis Mechanisms」の仕組みを解明することが不可欠です。
細胞が立体的に成長する様子を詳しく分析するため、生きた生物を透明球体の中心に置き、多方向から観察しながら姿勢とラッキングもできる顕微鏡ステージが開発されました。さらには、細胞分化を誘導できるようにし、細胞に立体構造を作らせる研究が進められています。例えば、サメの鱗は水中で速く泳ぐため、位置によって形や大きさが異なりますが、現在の3Dプリンターでその構造を再現することは困難です。個々の鱗を最適な形で形成する生物の高度なものづくりの秘密の解明が期待されています。
新しい分野を支える学際アプローチ
未知な生命現象の発見・分析を極めるためには、従来の装置や技術では検出・解析が困難な場面があります。そこで、実験や観察のための装置の開発から取り組むことも必要になります。材料科学、機械系研究者の協力を得るなど、さまざまな分野の技術を積極的に取り入れた学際的なアプローチによって支えられているのです。
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先生情報 / 大学情報
山形大学 工学部 システム創成工学科 准教授 ガリポン ジョゼフィーヌ 先生
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分子生物学、生命情報科学先生が目指すSDGs
先生への質問
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