宇宙からの観測で知る海上の気象
海上風と気象・気候との関係
私たちが毎日の生活で利用する気象情報の中に、海の上を吹く風(海上風)があります。海上風は、海上の気象に影響し、波浪や流れを発生・発達させます。また、海上風は、海上の気象だけではなく、沿岸の陸域の気象にも影響を及ぼします。そのため、海上風の情報は、毎日の天気を予報するためにも利用されています。一方、海の業務(海上の安全活動、漁業、海上運輸など)に携わる人々にとっては、海上風を理解することは、安全に関わるため特に重要です。このように、海上風を知ることは、気象・気候の理解や海上安全のために非常に重要なことなのです。
海上風の観測と実態
海上風の観測にとって重要なのは、人工衛星による観測です。人工衛星に搭載したレーダーによって、海上の風速と風向を推定します。つまり、宇宙からの観測によって、広大な海の上の風の分布を観測しています。観測された海上風の様子をみると、風をさえぎるもののない海の上とはいえ、一様な強さや方向で吹いているとは限らないことがわかります。特に、沿岸海域では、陸上の地形の影響を大きく受けて、局地的な強風が発生することがあります。時に、海上風の観測は、私たちの想像を超えるような、海上風の分布の複雑さがあることを教えてくれます。
風のエネルギーの利用
気象・気候の理解や海上安全に加えて、再生可能エネルギーの一つである風力エネルギーの利用・導入の促進のために、海上風の理解が重要視されるようになってきています。陸上よりも海上の方が、風速が大きく、風の乱れが小さいという特徴を有効利用するためです。風力エネルギーは、どの海域で豊富なのか、その海域では時間的な変動はどのくらいなのか、その変動を予測することはできるのか。このような問いに答えるためには、観測やシミュレーションを組み合わせ、さまざまな観点から海上風の気象学的な理解をさらに進めていくことが必要です。
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先生情報 / 大学情報
弘前大学 理工学部 自然エネルギー学科 准教授 島田 照久 先生
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