古い建物が地域の宝物になる! 「歴史まちづくり」に取り組む人々

「歴史まちづくり」はなぜ必要?
近所のお店や古い建物など、普段見慣れていた光景がいつの間にかなくなっていた、という経験はありませんか。建物が取り壊されたり廃屋になったりする場所があると、人々が寂しさを感じるだけでなく、地域の活気も失われてしまいます。日常的な風景ほど、そこに何があったのか、という記録が少ないために、人々の記憶からも消えてしまいがちです。そこで人々の記憶や思い出というものを大切に、その地域の歴史を感じさせる建物を活用して良好な景観を維持し、継承していこうとする「歴史まちづくり」が始まりました。
古い建物を維持し活用する商店街
「歴史まちづくり」は、建物の維持する難しさや、後継者不足といった課題をともないます。これらを地域の力で乗り越えようとしている事例の一つが、山形県鶴岡市の山王商店街です。大正や昭和の時代に作られた古い建物を、店舗や住居として使い続け、元々の用途を失ったものについては活用法を考え、リノベーションして新たな用途を生み出しています。このまちでは古いものを大切にする一方で、新しい取り組みも積極的に行っています。その一つが平成6年に始まった山王ナイトバザールです。車社会の発展や大型店の進出により衰退していた時期もある商店街ですが、こうしたイベントを定期的に行った結果、地域の内外から人が集まり活気を取り戻しました。
人々の思いがまちの力に
山王商店街をフィールドにした「歴史まちづくり」の取り組みについての聞き取り調査も行われています。そこからは、古い建物を地域の宝物として捉え、多くの人々に伝えていこうという、熱い思いと様々な行動が見えてきました。「歴史まちづくり」にとっては、モノのもつ価値はもちろんのこと、人々の思いもまた大切な要素なのです。そしてモノや思いは少しずつ形を変えながら、新たな世代の人々にも着実に継承されています。こうした地域の宝物はきっとどのまちにもあるはずです。身近にある宝物を探求することで、「歴史まちづくり」はさらに広まっていくことでしょう。
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弘前大学教育学部 社会科教育講座 教授(学部長)髙瀬 雅弘 先生
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