「ロボット丸ごと開発」のアイデアの連鎖が生む新しい技術

「ロボット丸ごと開発」のアイデアの連鎖が生む新しい技術

「ロボット丸ごと開発」をめざす

現代社会では、さまざまなロボットが活躍しています。ロボットの研究では、目、腕、脚などパーツの開発をする場合もあれば、ある目的を果たす「ロボット丸ごと1体」の開発をめざすこともあります。例えば、人と暮らす「生活支援ロボット」を丸ごと1体開発することを考えてみましょう。このようなロボットには、安全性と作業性を両立させるための細く軽い腕やいろいろなセンサ、重い荷物を持ち運ぶなどの作業ができるプログラムが必要です。さらに、そのプログラムは、場面に合わせて一つひとつ作ると膨大な数になりますから、それを解決するためのアイデアが必要になるのです。このように、ロボットを丸ごと1体開発する過程で次々と立ち現れる難問をクリアしていくために、「アイデアの連鎖」が生まれます。

アイデアを別の用途に応用する

ロボットの研究開発の過程で生まれたアイデアが、別の用途に応用され、新しい可能性を開くこともあります。
例えば、ロボットの腕の先につける手(ハンド)がその1つです。生活支援ロボットの手は、小さく軽く、精密な動きが必要です。そのために、新しい減速機(動力を歯車などで回転速度を減じて出力する機構)や関節を曲げるためのメカニズムが生まれました。このアイデアは、家電や工作機械、先端医療機械などへの応用も模索されています。

「環境調査ロボット」や「足こぎ車いす」への展開

そのほか、湖沼の環境調査のために、水深数十メートルの湖底の泥を採取する「環境調査ロボット」や、ロボットのシステムを車いすに応用した「足こぎ車いす」なども、これまでの研究開発によって生まれたアイデアを駆使するとともに、さらに新しい発想の源泉にもなっています。例えば、「足こぎ車いす」は、足の筋肉を電気信号によって動かしてペダルを漕ぎますが、これはロボットの仕組みを使い、動力源を人間の筋肉に置き換えるという斬新な発想で実現しています。
このように、「ロボット丸ごと開発」によるアイデアは、新たな技術開発へもつながっているのです。

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福島大学 共生システム理工学類  教授 高橋 隆行 先生

福島大学 共生システム理工学類 教授 高橋 隆行 先生

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機械工学、ロボット工学

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メッセージ

私の場合は、子どもの頃から好きなことがありました。ですから、あなたもまず、自分の好きなこと、自分が究めたいと思えることを見つけられるといいと思います。でも、私の経験から言っても、大学の進路は必ずしも「好きなこと」や「究めたい分野」にこだわる必要はないと思います。むしろ、自分がこれまでやってこられなかったことに、あえて挑戦してもいいのではないでしょうか。好きで打ち込んだこと、あえて挑戦したことは、どこかで融合し、オンリーワンの個性となるでしょう。

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「新生福島大学宣言」で明らかにした、「福島大学の理念」は、(1)自由・自治・自立の精神の尊重、(2)教育重視の人材育成大学、(3)文理融合の教育・研究の推進、(4)グローバルに考え地域とともに歩む、を掲げています。特に、学生教育を重視し、全学年にわたる少人数教育、共通領域科目及び専門領域科目とともに、キャリア形成論などのキャリア創造科目を含む自己デザイン領域科目を新たに設け、さらに文理融合教育を進めています。