ロボットに柔らかい紙コップを握らせる技術
多関節アームロボットで紙コップを握るには
柔らかい紙コップをつぶさないように多関節のアーム型ロボットで握るには、通常は圧力センサーや接触センサーでコップの硬さを検出し、その情報をもとにモーターを制御します。この方法はセンサーやモーターを複数用意し、硬さの情報をフィードバックするためのシステムを構築しなければなりませんし、実用化には、それなりの費用がかかります。ところが、センサーや複雑なシステムを使わない方法があります。モーターも第一関節に接続した1個しか使いません。
「クラッチ機構」を利用して、もっと簡単に
この方法で利用するのは、「クラッチ技術」です。クラッチとは、回転力を別の回転軸に伝えるときに動力をつないだり、切ったりする機構のことです。ベルトで動力伝達を行うときに、摩擦を小さくしておけば、一定の力までは動力を伝えますが、それ以上は滑って伝わらなくなります。この原理を利用するのです。
コップを握る場合は、まずモーターの動力でベルトが回りだし、第一関節が曲がります。コップに接触すると、コップの硬さが抵抗になり、ある程度締め付けるとベルトが滑りだします。すると、次の関節のベルトが回りはじめ、第一関節と同じような動きをします。同じことを繰り返し、最後の関節で紙コップを握って終了します。
IT技術を付加し、腕のリハビリに応用
実は、腕に障がいのある人の関節の曲げ伸ばしのリハビリに、この技術を応用しようというアイデアがあります。リハビリで重要なのは、本人の能力以上にアシストし過ぎないことです。このクラッチ機構を利用した多関節アームを腕に装着してやれば、ベルトが力を加減するので、アシストし過ぎないサポートが可能になります。さらに、IT技術を利用してリハビリの回数や時間、位置情報などをクラウドに保存し、家族や医療関係者が情報を見る機能も付加する計画です。IT技術を医療や福祉に活用することが、今後ますます求められていくでしょう。
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先生情報 / 大学情報
崇城大学 情報学部 情報学科 准教授 亜原理 有 先生
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