「食品の指紋」を識別するロボット

「食品の指紋」を識別するロボット

好みのワインを選ぶソムリエロボット

ワイングラスをクルクルと回して、まずは色を確認。次いでグラスに鼻を近づけて匂いを嗅ぎ、最後に、ひとくち含んで舌になじませ、「この味わいは濡れた子犬の……」などとワインの解説をするソムリエのように、たくさんのワインの銘柄を識別できるロボットがいます。
ソムリエロボットは、2005年の「愛・地球博」でお披露目された味覚を持つロボット“味見ロボット”が進化したことで生まれました。味見ロボットといっても舌はないので、人間のように味細胞(みさいぼう)で食べ物の味を判断するのではありません。「あるもの」を使って、食品に含まれている成分を分析し、その成分比によって食品名を識別するのです。そこから脂肪や糖分の摂り過ぎをアドバイスしたり、果物の食べごろなどを知らせることも可能です。

「食品の指紋」を読み取る

分析に使われる「あるもの」とは、赤外線です。赤外線は、例えば自動ドアや携帯電話の通信機能といった身近なものにも使われていますが、この赤外線を食品に照射することによって、波長ごとの吸収度合い(吸光度スペクトル)を測定します。
吸光度スペクトルは食品によってそれぞれ異なり、まさに「食品の指紋」と言えるものです。ですから、食品の吸光度スペクトルをロボットに記憶させ、目の前に出された食品の成分と比較することで、その食品が何であるかがわかるのです。ワインの場合、吸光度スペクトルの差が他の食品より小さいので、味見ロボットの赤外線分析機能を向上させる必要がありました。今後は、お客さんに質問し、そのお客さんの好みの銘柄をサービスできるようにソムリエロボットが進化するかもしれません。

食の安全にも役立つ可能性が

食品の成分や銘柄の識別ができるようになったということは、すなわち、食べ物の品質や鮮度を測れるようになったということでもあります。食品が生産者から消費者に運ばれるとき、このような赤外線による分析機能を使えば、近年しばしば起こっている食の偽装問題も解決できるかもしれません。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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三重大学 生物資源学部 生物圏生命化学科 教授 橋本 篤 先生

三重大学 生物資源学部 生物圏生命化学科 教授 橋本 篤 先生

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食品工学、化学工学、生物情報工学

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メッセージ

いろいろな情報ソースに触れて、視野を広く持ってください。そして、インターネットのような玉石混淆の情報からは、必要なものを取捨選択する力を身につけてほしいと思います。そのためには、何が正しくて何が間違っているのか、自分で考えなければなりません。最近は、情報をただ暗記するという人も多いように思いますが、なんでもかんでも鵜呑みにするのでは困ります。考える力を身につける訓練には、数学がお薦めです。問題文の意図を読み取って正解への道筋を考えなければ、答えにはたどり着けませんから。

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三重大学は、5学部を擁する総合大学です。教育・研究の実績と伝統を踏まえ、「人類福祉の増進」「自然の中での人類の共生」「地域社会の発展」に貢献できる「人材の育成と研究の創成」を目指し、学術文化の受発信拠点となるべく、切磋琢磨しています。