コメは足りない、それとも余る? 農業経済学で安定した食料流通へ

農業経済学には情報収集が不可欠
いろいろなメディアで、米の不足や逆に余っているというニュースを見聞きしたことがあるでしょう。米の生産量はある程度の目安が決められますが、天候やその年の作況、各農家の取り組みなどさまざまな要素が影響し、目安通りになるとは限りません。
そのため安定的な流通には、生産農家や流通にかかわる農協、卸売業・小売業、外食産業、消費者へのヒアリングや、農林水産省の統計資料などから情報を収集して、現状を分析することが不可欠です。例えば2024年に起こった米不足は、コロナ禍で落ち込んだ需要に対応して生産が減らされたことや、コロナ後にインバウンド需要が回復・増加したことなどが影響していると考えられます。
複眼的な視野が重要
もっとも、米が不足しているなら生産量を増やせばいいという単純な話ではありません。短期的に不足していても、中期的には米は余る傾向にあるからです。また長期で見るとさらに状況は異なり、耕作地の減少や農家の人手不足から、今後日本での米の生産量は減っていく可能性があります。このように経済の分析には、期間や社会情勢など複眼的な視野を持つことが重要です。
日本の食料自給率は現在38%前後であり、国際情勢が不安定化していることも考えれば、長期的な米の減産は食料安全保障の問題につながる恐れもあります。自給率を上げて、食料の安定した流通を確保するための研究が進められています。
北海道米の販売戦略分析も
かつて北海道の米は美味しくないといわれていましたが、技術の向上や品種の開発、設備投資、販売戦略などで、いまやブランド化しています。その結果、これまで農協を通して販売していた農家がインターネットなどで直接販売するなど、販売ルートに変化が生じています。直接販売は農家にとって利益となる一方、転売などでブランドイメージが傷つく危険性もあり、バランスが必要です。このような状況を分析して、よりよい販売戦略につなげることも農業経済学の研究テーマの一つです。
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酪農学園大学循環農学類 教授相原 晴伴 先生
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