スマホの「フィルタリング」機能は、憲法違反?
ネットトラブル対策としてのフィルタリング機能
現在、多くの高校生がスマートフォンを使っていますが、利用上のトラブルが増加しています。危険なものは、SNSで悪意ある人と知り合ってしまい、ネット犯罪の被害に遭うというものです。また、いじめやウイルス感染、スマホ依存などの問題もあります。その対策として、ソーシャルメディアやアダルトコンテンツの利用を制限する「フィルタリング」という機能が整備されています。平成21年からは、「青少年インターネット環境整備法」という法律が施行され、保護者が解除を申し出ない限り、18歳未満にはその利用が義務づけられています。
フィルタリングの強制は、憲法違反?
しかし、罰則がないこともあり、実際のフィルタリング機能利用率は約半分くらいです。この状況を、憲法上の人権の問題として考えてみましょう。そもそも、法律で強制的にフィルタリングを義務づけ、一定の情報にアクセスできないようにするということは、実は憲法で保障されている「表現の自由」や「知る権利」などの基本的人権が制限されるという点で憲法違反のおそれがあるのです。
大人がよく使う「(制限することは)あなたのためなのですよ」という言い方は、社会の常識では良しとされますが、憲法の世界では、そういう考え方はしません。「自分にとって何が良いかは、自分しか決められない」というのが憲法の考え方なのです。
「例外的に制限が許される」という解釈
では、これらの制限について法律の切り口ではどのように解釈されているのでしょうか? 高校生はまさに大人の一歩手前にいる存在で、守る必要があるとされ、法律の世界では「例外的にフィルタリングで行動を制限することも許される」と考えます。しかし、あくまでそれは例外です。大人になったら自己責任の世界です。
インターネットとのつきあい方やルールを憲法の視点で考えてみると、このようにさまざまな論点が見えてくるのです。
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先生情報 / 大学情報
京都大学 法学部 教授 曽我部 真裕 先生
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