健康診断データの活用法について考えよう
健康診断データを集める
健康診断を受けたことがありますか? そのデータはとても大切な個人情報なので、慎重に取り扱う必要があります。その一方で、健康診断のデータは医学的にも価値があり、人々の健康増進に役立てることができます。どのようなものを食べ、どういう病気にかかっているのかというような分析をすれば、病気の発症を未然に防ぐことができる可能性があるからです。
「個人情報保護」という課題
地方自治体では、さまざまな個人情報の管理を行っています。全国には2000ほどの「個人情報保護」の条例があり、情報の取り扱い方が異なります。そのため住民の健康データの収集は難しく、せっかくのデータを活用しきれていないのが現状です。例えば「認知症になった人が、どのような生活を送っていたか」というような医学的データを収集し、分析することは認知症のメカニズムの解明に役立ちますが、誰が認知症になったかという事実は慎重に取り扱うべき情報です。こうした問題を法的にどう解決するか考える必要があります。個人情報保護法を守りながら、どのように情報を活用していくかがポイントです。
新しい治療方法の発見のために
がんについては、「全国がん登録」という制度が確立し、がん患者のデータが全国で管理されています。がんの検診、治療の効果、がん生存率など、精度の高いデータを効率的に集めて、素早く発表できるようになりました。これは、「がん登録等の推進に関する法律」に基づいています。このようなデータの収集は、医学研究の発展につながり、難病に苦しむ人に新しい治療法を提供できる可能性があります。
日本の平均寿命は世界的にもトップレベルですが、健康上の問題がない状態で生活を送れる期間である「健康寿命」との差は10年ぐらいあります。人々は健康でなくなってから、さらに10年ほど生きるわけです。平均寿命と健康寿命の差をいかに埋めるか、解決のヒントは健康データの分析によって、見つかるかもしれません。
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鳥取大学 地域学部 地域学科 地域創造コース 教授 丸 祐一 先生
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