環境DNAで水の中の生物を守ろう!

環境DNAで水の中の生物を守ろう!

「環境DNA」で生態系を調査する

河川事業では治水や川の氾濫防止と同時に、生態系の保全が重要なテーマになっています。以前は厳密な生態系調査は不可能でした。しかし「環境DNA」を調べるという方法が普及したことで、短時間、低コストで調査することが可能になりました。これは、魚などの生物から排出される糞(ふん)やはがれた組織、粘液などに含まれるDNAを採取して分析することで、そこにすむ生物の有無や個体数を予測する方法です。川の水を採取するだけでよいので、DNAの分析機さえあれば簡単に調べることができます。

生態系の変化を知って、原因を調べる

生態系の保全は大切ですが、現状がわからなければ議論さえできません。また、今のところどの程度の魚がいれば望ましいかという基準もありません。そこで現在は環境DNAを使って実態の把握と、基準作りに向けての研究が行われています。調査は特定の種に絞ることも、環境にいる生物全体を知ることも可能です。
過去にいた魚の種類や個体数は文献や人の話からある程度知ることができますから、それに比べ大幅な変化があれば、次にその原因を探ります。ある種類の魚が減少しているとき、それが乱獲によるものか、水質汚染か、餌の減少か、外来種の侵入か、水温低下など気候変動によるものかを、さらなる調査で明らかにしていくのです。

河川事業計画や既存施設の改良、運用へも影響

環境DNAの生態系調査の結果は河川事業のプランにも生かされ、治水と環境保全を両立させる計画が可能になります。また、既存施設の改良や運用の向上にもつながります。例えばアユが獲れなくなったのが堰(せき)に原因があるとわかれば、堰の設計変更を行うこともできます。また、水温低下が理由であれば、ダムの水は深さで温度が違うため、放流水の温度を調節して環境をコントロールすることもできます。単に環境の実態がわかるだけでなく、次なるアクションへの道筋も明らかになるのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

山口大学 工学部 社会建設工学科 准教授 赤松 良久 先生

山口大学 工学部 社会建設工学科 准教授 赤松 良久 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

河川工学、生態学

メッセージ

私の専門は河川工学です。河川工学では、川の治水や氾濫防止というのが本来の研究目的です。しかし、今はそれと同時に川の環境を守る、つまり川の生態系を保っていくということも大事になっています。そこで工学部ではこれまで扱っていなかった「環境DNA」という新しい技術を用いて環境調査を行うなどして、新しい研究を進めようとしています。
あなたも自分の興味の範囲を狭めず、いろいろなことに興味を持って、勉強をしていくといいでしょう。そのことが将来、役に立つ時が必ず来ます。

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