飛行機のための「環境づくり」
飛行機の性能が上がっても
飛行機が開発されて約100年の間に、その技術は飛躍的に発達しました。軽くて丈夫な材料や燃費のよいエンジン、自動操縦装置など、現在もどんどん進歩しています。しかし、飛行機の安全で円滑な運航のための航空管制は、何十年もの間ほとんど変わっていません。現在の航空管制は、飛行機の優れた性能を生かし切れていないのです。
変わらない交通ルール
衝突の危険を避けるために、飛行機は航空管制官の指示に従って飛んでいます。航空管制官は飛行機同士が常に一定以上の距離を保つよう、高度や速度、方向を判断して飛行機に指示します。おかげで私たちは安心して飛行機に乗ることができます。ところが、たくさんの飛行機が飛ぶようになった今日になっても同じやり方が受け継がれています。そのため現在では多くの飛行機が遠回りをさせられ、慢性的な遅延が生じ、二酸化炭素排出や騒音など環境負荷の増加の一因となっています。これからさらに多くの飛行機が飛ぶようになります。そして今、多くの飛行機がその本来の性能を発揮しながら安全に飛行できるようにする「環境づくり」が求められています。
四次元航法と空の高速道路
新しい航法として、緯度・経度・高度の三次元に時間を加えた四次元のパラメータで飛行を管理する「四次元航法」が検討されています。現在は飛行機間の「距離の間隔」を保つことで安全を確保していますが、四次元航法により「時間の間隔」を空けることによっても安全を確保できます。これにより、たくさんの飛行機を安全を損なうことなく効率よく飛ばすことができるようになります。
また、飛行機同士が互いの位置を確認して、航空管制官の指示を必要とせずに安全な間隔を保つ技術の開発も進んでいます。これを活用すると「フローコリドー」という、空中の高速道路とも呼べるような経路の運航も可能になります。飛行機の膨大な運航データを分析すると、どこにフローコリドーを設ければよいか明らかにできます。
これから、飛行機の運航のあり方が大きく変わっていくことでしょう。
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先生情報 / 大学情報
東京都立大学 システムデザイン学部 航空宇宙システム工学科 教授 武市 昇 先生
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