宇宙に浮かぶ「人類社会」を考えよう-「宇宙人類学」の挑戦
近代科学が宇宙を人類から遠ざけた!?
古来、宇宙は人類の生活や文化と密接に関連していました。人々は天空の星の動きを見て天気を読み、暦を編み、未来を占いました。宇宙と人々の暮らしのつながりがさまざまな思想を生み、文明を大きく後押ししたのです。しかし近代科学の進展につれて、宇宙は「科学者の研究対象である未知の領域」となりました。一般の人々にとっては別世界というイメージが強まり、人間の生活世界から切り離された宇宙は、人文社会科学の学問分野の対象ではなくなりました。
「宇宙」がもたらす現代世界の変化
21世紀の重要な特徴はグローバル化(地球化)です。テクノロジーの発達によって、金やもの、人、情報が瞬時に世界を駆け巡っています。しかし、「グローバル」「地球」というイメージはどこから生み出されているのでしょうか? 宇宙からの映像のインパクトは、国境がない、宇宙に浮かぶ「地球」のイメージを創り出してきました。そして宇宙開発がもたらした衛星通信技術、GPS、衛星テレビ放送などの発展は、私たちの生活を大きく変えてきました。最近の宇宙開発の目的は「宇宙を産業の場や生活の一部と考え、地球における人類の諸問題を解決しよう」へと変化しつつあります。
「宇宙人類学」の挑戦
文化人類学は世界のさまざまな地域でフィールド調査を行い、異なる文化を理解しようとする学問分野です。その目的は、多様な価値観を持った人々の豊かな生活を知り、共存の方法を探り、「人類の文化」全体を理解しようとします。今日、人類文化を考えるということはグローバル、すなわち地球を考えることであり、それは宇宙を考えることでより深く考察しうるのです。「宇宙人類学」とは、「宇宙」という新しいフィールドに取り組む文化人類学の最前線の分野です。今や「宇宙」は文化や社会の面でも重要なフィールドになりつつあります。日本の宇宙開発は平和利用を柱に立てており、宇宙と社会、文化の問題を深く追究することは、日本が文化のソフトパワーで世界を先導しうる可能性を持っています。
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先生情報 / 大学情報
神戸大学 国際人間科学部 グローバル文化学科 教授 岡田 浩樹 先生
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