建物の耐震対策の要は、接合部分の強度判定!
「接合部分」が壊れると、地震に耐えられない
火山大国の日本は、地震大国でもあります。1981年に建物の耐震性に関する法律が見直され、以降、「耐震構造」「制震構造」などの技術も高度化しました。ただし、柱や梁をいくら強固につくっても、それらを溶接して組み合わせた「接合部分」が破壊されてしまうと、建物全体が倒壊する恐れがあります。そこで「建築工学」の分野では、巨大地震でも壊れない接合部を実現する研究が進められています。
壊れるかどうかの、明確な判断基準が必要
揺れに強い形状の接合部を開発する研究も重要ですが、むしろ、接合部が破壊する危険性を事前に診断する明確な基準を設けることの方が、実効性の高い地震対策と言えます。
近年の建築材料は、厳しい検査をパスして出荷されますから、目で見てわかるような欠陥はめったにありません。外部から見えない溶接内部の欠陥や、経年劣化による金属疲労などが、接合部破壊の原因になるのです。超音波や高周波電流を用いる内部検査方法が開発されていて、欠陥が見つかった場合には、その形や大きさをもとに、どの程度の地震まで耐えられるか、どの方向にどれくらい揺れたら壊れるかを、正確に判断できる基準づくりが急がれています。
溶接し直すと、破壊の危険性が高まる場合も
鉄は、一定以上の力が加わるとグニャリと曲がる「展延性」を持っています。建築に用いられる鉄骨は、この性質によって20%ほど伸びるので、その伸びしろを前提に耐震設計が行われています。
ところが、高熱を加えた鉄は性質が変化し、変形せずに折れたり割れたりする「脆性(ぜいせい)破壊」が起きやすくなります。欠陥が発見されたからといって、むやみに溶接のやり直しをすると、接合部がさらに脆(もろ)くなる危険性があるのです。そういったリスクを回避するためにも、壊れるか壊れないかの判断基準を明確にし、補修する場合はどんな方法で補修すべきかのガイドラインが求められているのです。
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崇城大学 工学部 建築学科 教授 東 康二 先生
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