「地震大国」日本のインフラを守る
地中を走るライフラインの耐震性を評価
世界有数の地震国である日本では、大規模な地震が起こることも少なくありません。そのため、巨大地震に備えて構造物の耐震化を進めるほか、被害を受けたときに早く復旧する方法や、物理的な復旧ができない場合の災害対応についての研究も重要です。特に電気や水道などのライフラインはほとんどが埋設されているので、地中の構造物特有の複雑な挙動を評価する必要があります。そこで、土槽に入れた管路が変形するときに受ける力や、液状化を起こしたときの管路の浮き上がりなどが実験室で調べられています。
地震動観測に道路の光ファイバーを利用
一方で、光ファイバーを使った地震動の測定も行われています。国内の主要道路の下には、道路の維持管理のための通信ケーブルとして光ファイバーが敷かれており、これを利用するのです。光ファイバーに光のパルスを送ると、地震の振動によって光ファイバーが伸び縮み(ひずみ)している部分がわかるため、そこから揺れのデータを得ることができます。これまで地盤の揺れの分析には地震計の観測データが用いられていましたが、飛び飛びの設置地点ごとのデータから全体的な地盤のひずみを評価するのは困難でした。これに対して道路の光ファイバーを使えば、沿道上の揺れのデータをすべて得ることができます。これらのデータ分析によって地盤のひずみをより正しく評価できれば、現在使われているひずみの計算式が書き換えられるかもしれません。
多面的なアプローチで早期復旧をめざす
実際に被災地へ行って、どのような被害を受けているのか調査することも大切です。災害の早期復旧を実現するためには、ライフラインのネットワークを生かして別経路につなぐといった技術的な対策だけでなく、電源車や給水車の適切な配置なども必要です。また中山間地域では、都市部に比べて耐震性が低く技術者も少ないといった社会的な課題もあります。そのため、災害復旧の研究はさまざまなアプローチで取り組まれています。
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先生情報 / 大学情報
神戸大学 工学部 市民工学科 教授 鍬田 泰子 先生
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