すばる望遠鏡が見つけた128億年前の宇宙の謎
日本が所有する最大の天体望遠鏡「すばる」
「すばる望遠鏡」は口径が8.2メートルある日本が所有する最大の望遠鏡で、ハワイのマウナケア山頂に設置されています。世界最大級の望遠鏡のなかでも、画質の良さには定評があります。光を集める鏡が1枚板であること、視界を悪くする原因である空気の「ゆらぎ」を軽減するために、ドームを半球型ではなく、風の通り道に配慮した茶筒型の設計にしたことなどで、高い解像度を実現しています。
ガンマ線バーストとは何か
ガンマ線バーストとは、大質量星がつぶれるときに強烈なガンマ線やX線のビームを発する宇宙最大の爆発現象です。爆発後、時間とともに暗くなる可視光の残光をともないます。ガンマ線バーストの残光を分光(光を「スペクトル=色の帯」に分けること)すると、周りの物質中の原子に固有の波長が吸収されるため、周囲の物質の成分を分析できます。また宇宙は膨張し続けているため、光源が遠いほど光の波長が伸びるので、その伸びから光源の距離を知ることができます。ガンマ線バーストはとても明るいため、宇宙の果ての近く(つまりビッグバンのすぐ後)まで観測することができるわけです。
ガンマ線バーストは、週に1回程度観測されますが、いつ、どの規模のものが起きるかは予測できません。
ガンマ線バーストをすばる望遠鏡で観測
2005年9月にすばる望遠鏡で観測したガンマ線バーストの残光のスペクトルを解析すると、バースト源は128億光年の距離にあると判明しました。ビッグバンからまだ9億年しかたっていない時に起きた、最遠のガンマ線バーストだったのです。また酸素や炭素、珪素(けいそ)などが検出され、128億年前に宇宙がどのような成分で構成されていたのかが読み取れたのです。現在、最遠記録は更新されましたが、データの精度ではこれを超えるものはありません。
この成果は、すばる望遠鏡が高い性能を持っていたために得られたものです。宇宙の研究において、すばる望遠鏡をはじめ日本の技術が大きな役割を果たすことが今後も期待されています。
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先生情報 / 大学情報
東京科学大学 理工学系(旧・東京工業大学) 理学院 物理学系 教授 河合 誠之 先生
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