「青い光」を狙え! 高効率の太陽電池をつくる
エネルギー効率の面では分が悪い
太陽電池は光からエネルギーを取り出す発電装置で、現在、一般的なビルや家屋に設置されているものであればパネル1枚(1m四方程度)で晴天時を考えると、光のエネルギー1kWを受けて150Wから180 Wの電力を作れます。つまりエネルギー効率は15~18%です。低効率とされるガソリンエンジンでさえエネルギー効率が30数%ですから、太陽電池のエネルギー効率はあまり高いとは言えず、発電効率の点から考えると、太陽電池は分が悪いと言えます。
どの光を狙うかが勝負の分かれ目
実は太陽電池の種類により発電に利用できる「光」は異なります。太陽の光はさまざまな波長が混じり合っていて、「赤い光」ほど量が多いもののエネルギーは小さく、「青い光」ほど量は少ないのですがエネルギーは大きくなります。なお、赤外線はエネルギーが小さすぎて発電に向かず、紫外線は量が少なく発電に使うことができません。
太陽電池は少なくとも2層の構造を作り、その間で電気を生み出します。現在、一般的に利用されているものは2層ともシリコンで作られた、どちらかといえば赤い光を狙った太陽電池です。実用性を踏まえた上で優れた太陽電池を作るには、シリコンより低コストの物質で15~18%に近いエネルギー効率のものを作るか、多少のコストがかかっても18%を超えるかです。エネルギー効率を上げるには、より青い光を狙った太陽電池を組み合わせることが近道です。
既存の太陽電池を超えるには
青い光からエネルギーを取り出せる物質は少ないのですが、近年は「ペロブスカイト」という物質が注目され、単にシリコンと組み合わせるだけでも25%前後の効率が見込めるでしょう。ただし、ペロブスカイトは鉛系の化合物のため扱いが難しく、用途も限られます。そのため比較的低コストな物質である銅や錫(すず)、亜鉛をベースにした化合物をグラフェンなどの炭素系材料と組み合わせて、同様のものを作る道も模索されています。
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信州大学 工学部 電子情報システム工学科 教授 橋本 佳男 先生
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