スーパーコンピュータでも計算しきれない電子の動きをとらえるには?

スーパーコンピュータでも計算しきれない電子の動きをとらえるには?

電子の動きを、正確には計算できない!

電流は、電子という小さい粒子の流れで、物質の中を電子が流れる際に生じる抵抗が電気抵抗です。電気抵抗の値を正確に計算するというのは、実はとてつもなく難しいことなのです。
古典的な力学でも、原子のスケールで物の運動をとらえる量子力学でも、1個の粒子の運動を計算することはできます。しかし、たくさんの粒子の運動を正確に計算することはできません。固体中の電子の数は膨大です。例えば水素の電子は、水素1グラム中に6×10²³個あります。たとえ最先端のスーパーコンピュータを使って、宇宙が誕生してから現在までくらいの時間をかけても、その数の電子の運動を解くのは無理だと言われます。

近似状態を見つけることが大事

量子力学は、電子や原子というごく小さな世界で起きる現象を説明するための理論です。多数の粒子の動きは正確に計算することができないので、おおよそこうなるという近似状態を出すのです。それは、現実の風景を見て絵に描くのと同じように、現象の本質をとらえた絵を描くようなものです。実際の現象をうまく説明できる近似状態を見つけ出すことができれば、それはノーベル賞級の研究になると考えられます。

現実の現象を扱う「物性物理学」

目に見えない電子の世界の出来事も、目に見えることがあります。それが磁石(磁力)です。磁石は、物質内の電子がそろって同じ向きになることで、磁力を発生させます。電子の世界の出来事も、たくさんの同じ状態が集まると、私たちの世界に影響を及ぼす現象を起こすことがあるのです。物質の性質を電子レベルでとらえるための学問を「物性物理学」と呼びますが、物性物理学とは、あくまで、現実の物質、現実の現象を対象にした学問です。
実際に、パソコンやスマートフォンをはじめとする最新の電子・通信技術には、量子力学と物性物理学の成果が大きく反映されています。これらは理論だけの学問ではなく、さまざまな形で人類の役に立つ学問なのです。

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東京都立大学 理学部 物理学科 教授 堀田 貴嗣 先生

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物性物理学

メッセージ

高校生から、研究者になりたいという声をよく耳にします。でも、いざ実際に受験を前にすると、大変そうだからとあきらめてしまう人が多いようです。もし研究者になりたいという夢があるなら、10代であきらめないでください。研究者になるための勉強を続けていれば、結果としてならなかったとしても、いくらでも道はあります。
大切なのは、「できることをする」のではなく、「自分のやりたいことをする」ことです。そのためにはどうすべきかを考えて、大学や将来の道を選んでください。

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