経済から情報を受け取り、情報が経済を動かす
リンゴの価値はどうやって決まる?
経済と情報は密接に関わっています。値段はものに対する価値の情報を集約したものだと考えられます。例えば、リンゴの価値は人によって違います。もし100個のリンゴが100円ですべて売れたとしたら、人々の思うリンゴの価値は100円以上だと言えます。半分売れ残ったら、買わなかった人はリンゴの価値を100円以下だと思っているのです。
これは株式の価値でも同じです。ある企業が将来どれくらいの利益を上げるかを予想することで、株式の価値は決まります。市場での価値を見ると、今その企業に対して人々がどのような予想をしているかがわかるのです。
美人投票のようなもの
逆に情報が経済を動かすこともあります。ニュースなどの情報に合わせて、株価や為替レートは動きます。経済学者のケインズは「株式投資は美人投票のようなものだ」と言いました。単に自分の好みの人に投票するのではなく、最も多く得票した人に投票した者が賞金をもらえるとした場合、投票者の思惑の読み合いが始まります。もし批評家が「この人が美人」と言ったとすると、みんなは批評家の意見通りの人に投票するかもしれないと考えます。株式投資でも、単に企業の利益を予想して株価が決まるだけではなく、どの株が人気なのかという情報により、株価が高くなるという動きが出てくるのです。
情報が企業を倒産に追い込む
業績が順調な企業でも、悪いうわさが流れたことで株価が下がり、資金繰りが滞って倒産に追い込まれることがあります。ですから情報が悪用されないように、株式の取引では法律で「インサイダー取引」と「風説の流布」が規制されています。インサイダー取引は自分だけが特権的に持っている情報を利用する取引、風説の流布は根拠のないうわさを流すことです。
不要な株価の動きがマクロ経済にも影響を与える可能性があります。情報が株価に与える影響について、また、そうなってもマクロ経済が動揺しないようにするにはどうしたらいいかといったことが研究されています。
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先生情報 / 大学情報
東京都立大学 経済経営学部 経済経営学科 准教授 荒戸 寛樹 先生
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