「人口減少」「高齢化」の社会を支えるシステムをつくるために
人が少なくても持続可能なシステムをつくる
近年、地方都市において人口減少や高齢化が大きな問題となっています。地方のこの変化は、わが国全体の未来を先取りしているとも言えます。その現実にどう「適応」していくのか、人が少ないなら少ないなりのコミュニティ運営を考えなければなりません。
具体的に挙げるなら、公共交通の例がわかりやすいでしょう。路線バスでは利用者がどんどん減少し、高齢化しています。「少ない予算で路線や便数をどう効率化していくか」「効率と利便性をどう両立させるのか」など、人口減少社会での課題解決に向けた研究が行われています。
「便利さ」を数値化して考える
予算を優先させるあまりに「便利さ」を犠牲にすれば、誰も利用しないシステムになってしまいます。しかし、「便利さ」のとらえ方は人によってさまざまです。そこで「便利さ」を数値化して計測する方法があります。ただ、「便利さ」を直接測ることはできません。そのため、例えば買い物をテーマとする場合、店までの距離や品揃えなどを指標として調査を行います。その結果、高齢者にとっては品揃えが豊かであるよりも距離が近い方が圧倒的に便利に感じられるという事実が数値となって表れるのです。数値化には確率や統計、最適化といった数学の手法を使用します。理系の知識が必要となる研究ですが、人の生活や社会経済を対象にする点ではフィールドワークなど文系的な要素も不可欠で、文理融合の分野です。
地域社会に貢献する「社会システム工学」
研究は、実際の地域と関わり合いながら、現場主義で行います。コンピュータ上でのシミュレーションにとどまらず、例えば、ある街の路線バスの運用を実際に設計します。地域の人や自治体の人と話し合いながら検討を重ね、その研究成果が実社会に適用されるのです。「社会システム工学」は、調査・研究を通じて地域社会に貢献できていると実感できる、大きなやりがいのある学問分野なのです。
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先生情報 / 大学情報
鳥取大学 工学部 社会システム土木系学科 教授 谷本 圭志 先生
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