読書から誰一人取り残さない社会を目指して
読書のバリアフリー
視覚障害のある人は、点字にされたり(点訳)、音声化されたり(音訳)した本を読んでいますが、そうした本の割合は全体の約5%しかなく、残りの95%近い本はそのままでは読むことができません。これは世界共通の課題となっており、これまで当事者たちは自分たちが読める形で本を買う自由や図書館で借りる権利=「読書のバリアフリー」を求めて、さまざまな働きかけを行ってきました。日本でも2019年に「読書バリアフリー法」がつくられ、障害の有無にかかわらずすべての国民の読書環境を整備する責務が国や自治体に課されるようになりました。図書館情報学という学問では、こうした読書のバリアフリーについても研究対象としています。
電子書籍への期待
読書のバリアフリー実現に向けて、期待を集めているのが電子書籍です。電子書籍は近年急速に普及が進み、スマホをはじめ幅広い端末に対応しています。また従来は本を一冊ずつ読み上げてデータにしたり、点字を作成したりしていましたが、電子書籍は元になるデジタルデータから簡単に拡大、点字化、音声読み上げができ、データの共有も容易です。一方で、画像データで作成されるコミックスのように、音声読み上げや点字化に対応しにくい本もあります。より多様な本をバリアフリー化するには、出版・行政・関連団体などが連携してルールづくりなどを進める必要があります。
図書館の役割
読書のバリアフリーは、SDGsの「誰一人取り残さない」という原則に合致するものです。その実現にはさまざまな本や資料を収集・保存し、人々に提供する図書館が果たすべき役割は小さくありません。これまでも図書館は読書のバリアフリー化に向けて点訳・音訳といった活動をしてきましたが、図書館によって取り組みの熱心さに差があるなどの課題もあります。こうした問題を明らかにするだけでなく、そこで得た知見を読書のバリアフリーの実現に生かすことも、図書館情報学の大切な役割なのです。
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専修大学 文学部 ジャーナリズム学科 教授 野口 武悟 先生
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